ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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exclusive defense

内助の吼

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「ユウさん

閉店の看板かけてくれる?」   


厨房から多喜が顔を覗かせ、ユウに指示を出した。


「はい。わかりました」

ユウは元気に返事をすると、入り口の営業中の札をひっくり返し、準備中にした。


「もう上がってもらって大丈だから。」

多喜は片付けの手を止めぬまま、ユウに優しく声をかけた。


「いえ、片付けやりますよ、ワタシ

指示してくださいね。」


ユウはそう言ってカウンターに近づいてきた。

ついこの間まで水商売の世界にいたとは思えないほど、今のユウは薄化粧でデニムに白のTシャツの上からエプロンをつけ、ごくごくフツーの女性という見た目をしていた。


「そうだなあ。
だったら申し訳ないんだけど、そこの寸胴を洗ってくれる?」

と、多喜は自分の後方を指差して言った。

「了解しましたー」


そう返事して、ユウがカウンターに入ろうとした瞬間、客が入ってきた。
自動ドアを切ってるのに、手動でこじ開けて。


「お客さん、すいません
もう閉店したんです」

多喜は、入口のほうに顔を向け、申し訳なさそうに言った。

しかし、その客は諦めるどころか、完全に体を店の中に入れてきた。

そして、何故か

「こんばんは…」

と挨拶をした。


「あっ」

多喜は思わず声を上げたが、すぐにユウが

「功ちゃん!

なんで?」

と、焦ったような口調で言葉を被せてきた。



「いや、お前の事が心配で、迎えに来た…」

功太は、照れくさそうに小さな声で言い、カウンターの中にいた多喜に頭を下げた。


「多喜さんご無沙汰してます。

この度はコイツを雇ってくれてありがとうございます。」

功太がまた頭を下げると、多喜は慌ててカウンターの外に出てきて、さらに深く頭を下げた。


「赤石さん、お久しぶりです。

その節は色々とすみませんでした。
お詫びもしないままになっちゃってて…」


「いや、それはお互い様やし…」


「はい。

ユウさんは一生懸命働いてくれてて、本当に助かってます。」


「そうですか?
足引っ張りまくりなんとちゃうかって、心配してたんですけど、少しでもお役に立ててるんやったら嬉しいですわ。
ホッとしました。」

功太は、そう言うと、ようやく笑った。


「あの、汚いとこですが、よかったらどうぞ座って下さい。
お茶でも出しますので」


「いやいや、片付けをしてるのにお邪魔してホンマすんません。
ちょっと待たせてもらいますわ」

功太はぎこちなく言うと、そのまま立っていたが、多喜に説得され、しばらくして椅子に腰を下ろした。


三人の奇妙な組み合わせ…
何とも表現し難い空間となった。
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