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exclusive defense
研磨
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「豊田師範」
豊田憲は、道場の前で、後ろから声をかけられたために振り返った。
「ご無沙汰しています。」
視線の先には美しく、モデルのようなスタイルの女性が立っており、目が合うなり深々と頭を下げた。
「あの、どちらさまですか?」
豊田は少し戸惑った様子で、その見知らぬ女性を見つめて言った。
「あの、ワタシ
新田です。
以前、ここでお世話になりました新田薫です。」
「…」
豊田は頭に?マークが点灯した。
だが、しばらく間があった後
「新田って…」
「はい。
十年くらい前にここで師範に教えていただいていた新田薫です。
すいません。
今、ニューハーフをしていまして…こんな容姿で…」
「えっ…
えーーーーっ!!」
豊田はようやく、目の前の人間がその昔の愛弟子であった新田薫だと認識した。
「いやいや、スマン
君の変わりように驚きすぎてしまって…
でも、新田君は沢木組にいたんじゃなかったっけ?」
「沢木組はもう辞めていまして、その後はニューハーフとしてお店に出ていたんですが、今はラーメン屋で働いています。」
「そうやったんかいな。
びっくりしてもーたわ。
ところで、今日は?」
豊田は鍵を開けながら薫に言うと
「師範
また、ここに通わせていただいてもよろしいでしょうか。」
と、少し恥ずかしそうに答えた。
「いや、それは全然かまへんけど、今さらキミに教える事はないんとちゃうか。
強すぎたからなあ、新田くんは。」
「いえ、もう何年も体を動かすような事はしていませんし、見ての通り、ニューハーフになって去勢手術とか女性ホルモンの投与をずっと行なってきましたので、筋力も体力もすっかり落ちてしまってるんです。
もう一度鍛え直さないと…」
「そうか。
それやったら大歓迎やで。
まだ誰もおらんし、まあ、中に入りなさい。」
「はい。」
薫は豊田に促されて道場の中に入った。
「知ってると思うけど、ウチは顔面攻撃ありのフルコンタクトの空手、いわば実戦で使える空手というものを標榜している団体だ。
故に、他の空手道場と比べて、女子がほとんどいない。
それでも大丈夫か?」
「はい。
ダイエットだとか体を少し動かしたいとかじゃなくて、もう一度実戦形式の空手を学びたいと思い、ここを訪ねてきましたので、その方がありがたいです。」
「はい、これ」
豊田は、戸棚の中から真新しい道着を取り、薫に手渡した。
「師範…」
「ウチに来てくれるんやろ?
せやったら、コレ着て久しぶりに体動かしてみんか?」
「はい。」
豊田の言葉に、嬉しそうに返事をした薫は、道着を受け取った。
豊田憲は、道場の前で、後ろから声をかけられたために振り返った。
「ご無沙汰しています。」
視線の先には美しく、モデルのようなスタイルの女性が立っており、目が合うなり深々と頭を下げた。
「あの、どちらさまですか?」
豊田は少し戸惑った様子で、その見知らぬ女性を見つめて言った。
「あの、ワタシ
新田です。
以前、ここでお世話になりました新田薫です。」
「…」
豊田は頭に?マークが点灯した。
だが、しばらく間があった後
「新田って…」
「はい。
十年くらい前にここで師範に教えていただいていた新田薫です。
すいません。
今、ニューハーフをしていまして…こんな容姿で…」
「えっ…
えーーーーっ!!」
豊田はようやく、目の前の人間がその昔の愛弟子であった新田薫だと認識した。
「いやいや、スマン
君の変わりように驚きすぎてしまって…
でも、新田君は沢木組にいたんじゃなかったっけ?」
「沢木組はもう辞めていまして、その後はニューハーフとしてお店に出ていたんですが、今はラーメン屋で働いています。」
「そうやったんかいな。
びっくりしてもーたわ。
ところで、今日は?」
豊田は鍵を開けながら薫に言うと
「師範
また、ここに通わせていただいてもよろしいでしょうか。」
と、少し恥ずかしそうに答えた。
「いや、それは全然かまへんけど、今さらキミに教える事はないんとちゃうか。
強すぎたからなあ、新田くんは。」
「いえ、もう何年も体を動かすような事はしていませんし、見ての通り、ニューハーフになって去勢手術とか女性ホルモンの投与をずっと行なってきましたので、筋力も体力もすっかり落ちてしまってるんです。
もう一度鍛え直さないと…」
「そうか。
それやったら大歓迎やで。
まだ誰もおらんし、まあ、中に入りなさい。」
「はい。」
薫は豊田に促されて道場の中に入った。
「知ってると思うけど、ウチは顔面攻撃ありのフルコンタクトの空手、いわば実戦で使える空手というものを標榜している団体だ。
故に、他の空手道場と比べて、女子がほとんどいない。
それでも大丈夫か?」
「はい。
ダイエットだとか体を少し動かしたいとかじゃなくて、もう一度実戦形式の空手を学びたいと思い、ここを訪ねてきましたので、その方がありがたいです。」
「はい、これ」
豊田は、戸棚の中から真新しい道着を取り、薫に手渡した。
「師範…」
「ウチに来てくれるんやろ?
せやったら、コレ着て久しぶりに体動かしてみんか?」
「はい。」
豊田の言葉に、嬉しそうに返事をした薫は、道着を受け取った。
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