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road to lord
叔父
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未来の軟弱さを叩き直すために、父の孝通は武道を中心とした習い事をさせた。
孝通の弟である涼太もまた、幼き日より空手を習っており、有段者であった。
未来は主に涼太により空手を教わり、メキメキと上達していった。
涼太の性格は父とは正反対でとても温厚で、悩みの多かった幼少期の未来が心を開いて話が出来た数少ない人間のうちの一人だった。
それ故に、未来の悩みを薄々感づいていたが、敢えて触れようとはしなかった。
そして、今
女になった甥の姿を見て、そのとき感じた事はそうだったのかと、今更ながらに感じていた。
「未来ちゃん、初詣行こうよ」
針の筵にいる未来に、涼太は助け舟を出した。
「えっ、うん」
未来も、この場から離れたい思いで、その誘いに乗った。
みんなの視線を感じながら、未来は立ち上がり、涼太の後を追って玄関に向かった。
ブーツを履いて外に出ると、涼太が家から少し離れたところに立っており、未来に向かって手を挙げた。
「涼ちゃん、ゴメンね
ワタシのために外に出てくれて。」
未来は申し訳なさそうに言って、涼太の方をチラッと見た。
「いや、未来ちゃんと初詣に行きたかっただけだから。
それに、色々話も聞きたかったしな。」
「話?」
「女になった感想とかを」
涼太はそう言ってニヤッと笑った。
「へえ、女性ホルモンてすごいんだなあ
そんなに体が変化するのか」
「うん。
でも、個人差があるみたいで。
ワタシはたまたま体に合ったみたいで胸もそれなりに膨らんだの。
でも、何年経ってもぺっちゃんこの人も結構いて、豊胸手術をする人達も結構いるの。」
「あー、シリコンとか入れんのか。」
「アレってすごく痛いんだって。
ワタシは今の胸でまあまあ満足してるから、豊胸はしないつもりだよ。」
「自分で納得してたら、それはそれでいいよな。
ところで、彼氏とかいるんか」
「えっ…
うん
好きな人はいるよ」
「やるじゃんか。
ちゃんと告白したのか」
「向こうからしてくれたの。
ワタシが男だってわかった上で。
それで、結婚しようとも言ってくれたの。」
「おっ、やったなあ」
「ワタシ、お嫁さんになるのが小さい時からの夢だったし、プロポーズをお受けしたの。
それで、このお正月に実家に帰ってカミングアウトしようと決めたんだ。
多分お父さんのあの剣幕なら、理解はしてくれないと思うけど…
自分としてはケジメをつける意味でね。」
「いや、兄貴もわかってくれると思うよ。
俺からも話してみるし。」
「ありがとう、涼ちゃん
涼ちゃんがいてくれてホントに良かった。」
「そんな事気にすんなって。
可愛い甥っ子…いや、姪っ子のためや。」
涼太はそう言って笑った。
孝通の弟である涼太もまた、幼き日より空手を習っており、有段者であった。
未来は主に涼太により空手を教わり、メキメキと上達していった。
涼太の性格は父とは正反対でとても温厚で、悩みの多かった幼少期の未来が心を開いて話が出来た数少ない人間のうちの一人だった。
それ故に、未来の悩みを薄々感づいていたが、敢えて触れようとはしなかった。
そして、今
女になった甥の姿を見て、そのとき感じた事はそうだったのかと、今更ながらに感じていた。
「未来ちゃん、初詣行こうよ」
針の筵にいる未来に、涼太は助け舟を出した。
「えっ、うん」
未来も、この場から離れたい思いで、その誘いに乗った。
みんなの視線を感じながら、未来は立ち上がり、涼太の後を追って玄関に向かった。
ブーツを履いて外に出ると、涼太が家から少し離れたところに立っており、未来に向かって手を挙げた。
「涼ちゃん、ゴメンね
ワタシのために外に出てくれて。」
未来は申し訳なさそうに言って、涼太の方をチラッと見た。
「いや、未来ちゃんと初詣に行きたかっただけだから。
それに、色々話も聞きたかったしな。」
「話?」
「女になった感想とかを」
涼太はそう言ってニヤッと笑った。
「へえ、女性ホルモンてすごいんだなあ
そんなに体が変化するのか」
「うん。
でも、個人差があるみたいで。
ワタシはたまたま体に合ったみたいで胸もそれなりに膨らんだの。
でも、何年経ってもぺっちゃんこの人も結構いて、豊胸手術をする人達も結構いるの。」
「あー、シリコンとか入れんのか。」
「アレってすごく痛いんだって。
ワタシは今の胸でまあまあ満足してるから、豊胸はしないつもりだよ。」
「自分で納得してたら、それはそれでいいよな。
ところで、彼氏とかいるんか」
「えっ…
うん
好きな人はいるよ」
「やるじゃんか。
ちゃんと告白したのか」
「向こうからしてくれたの。
ワタシが男だってわかった上で。
それで、結婚しようとも言ってくれたの。」
「おっ、やったなあ」
「ワタシ、お嫁さんになるのが小さい時からの夢だったし、プロポーズをお受けしたの。
それで、このお正月に実家に帰ってカミングアウトしようと決めたんだ。
多分お父さんのあの剣幕なら、理解はしてくれないと思うけど…
自分としてはケジメをつける意味でね。」
「いや、兄貴もわかってくれると思うよ。
俺からも話してみるし。」
「ありがとう、涼ちゃん
涼ちゃんがいてくれてホントに良かった。」
「そんな事気にすんなって。
可愛い甥っ子…いや、姪っ子のためや。」
涼太はそう言って笑った。
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