ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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恋人との日々編

年の瀬

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「未来、アンタねえ
いいかげん正月くらいは帰ってきなさいよね!」

十二月の初め、日曜の朝イチに未来に電話をかけてきた母の麻美は、かなりのマジトーンで、そう告げた。


「あー、うん…」

ハッキリとしない、そして元気のない声で返事をした未来は、用事があると適当な事を言い、早々に電話を切った。


未来はベッドに携帯を放り、しばらくボーっと考え事をしていたが、ユウとランチの約束をしていた為に、程なくして起き上がった。

シャワーを浴び、入念なメイクと着替えを済ませると、未来は待ち合わせの場所に向けて出発した。





「そっかあ
やっぱり帰ってこいって言うかあ」


食事を待つ間、ユウは、未来から朝の電話の一件を聞き、少し難しい顔をして言った。

「はい。
近鉄で二時間もかからない距離なのに、もう二年近く帰ってないんですもん
そりゃ言いますよね」


「そうやね
未来ちゃん四日市やもんね。
そら、言うわ。」


「今回無視したら向こうから訪ねてきそうで怖いから、覚悟を決めて帰ることにしました。」


「いつかは帰んないとダメやもんね。」


「ワタシ、男の格好で帰ったら何とか誤魔化せますか?

覚悟を決めたって言いましたけど、本当は言い出すのが怖くて…

次の機会でカミングアウトしようかなって…」


「あー、それはムリ。

未来ちゃんさあ、アンタのその変わりようって自分で気づいてないかもしれないけど、ワタシに言わせれば、一年半前とは、変わったっていうか、別人のレベルよ。」

「そうですか…
ムリかあ…」


「ムリムリ…
諦めなさい。

こうなったら、当たって砕けろよ。

もうタマも取っちゃって無いんだし、男に戻る事なんて不可能なんだから、親に何言われたって自分を貫き通すことよ。」


「そうですね。

覚悟決めて、カミングアウトしてきます。」


「そうそう、その意気よ。」


「ところで、岡田さんとはどうなってんのよ。

ワタシに恋バナ聞かせなさい。」


「あれから進展はないっていうか…
あっちも忙しいみたいで、ゆっくり時間を取れない感じで…最近は全然会えてないんです。」


「そう…
それはちょっと寂しいわね。」


「でも、久しぶりに明日お店に来てくれるって言ってたから、その後ちょっと二人で時間取れるかなって期待してるんです。」


「うんうん。
寂しかったんだぞって文句言って、指輪でも買うてもらいーや」

「会えるだけで十分です。」

未来は顔を赤らめて俯いた。

「あ、ユウさんはどうなってるんですか?

赤石さんと。」


「一緒よ、一緒

おたくのカレシが忙しいんやったら、ウチのなんて下っ端だから、もっと忙しくしてるわ。

最初は年内に式挙げて、一緒に住もうかって言ってたんだけど、延期よ。

この調子やと、早くても春かな。」

「そうなんですね…
寂しいですよね」

「ホルモンバランスもワタシらって崩れがちやから、思うようにいけへんと…堕ちるよねえ」

ユウは自嘲気味に言って、力なく笑った。
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