ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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再起編

百々

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多喜の言葉を受けて、薫は少し考えるような素振りを見せて俯いていたが、すぐに上を向いた。

「沙織さん。
ワタシなんかのために色々考えてくださってありがとうございます。

ワタシ、小さな時から、魔法で女の子になれたらなあなんて、ずっと思って生きてきたんです。

それが現実のものになるなんて、夢にも思いませんでした。

薬を飲んだら完全な女性になれるなんて…


でも、こうやって現実を目の当たりにすると、戸惑いが多くて、卑怯なやり方だけど、真ちゃんに意見を求めてしまいました。

もし、真ちゃんがワタシに女性になってほしいと言ったなら、迷わずその薬を受け取っていたと思います。

でも、真ちゃんは今のままでもどちらでもいいと言ってくれました。

それを聞いて、ワタシの気持ちは固まりました。」


「…」


「ワタシ、このままの状態でこれからも生きていこうと思います。」


「そっか

わかった。

薫さんがそういう思いなんだったら、ワタシがとやかく言う筋合いはないよね。

でも、性転換をしない理由だけ教えてもらってもいい?」

亮輔は薫が性転換を固辞した理由が知りたくて、思わず質問をした。


「なんとなくなんですけど…
性転換したら、ワタシがワタシでなくなるような気がしたんです。

たとえば、この料理を今のワタシは美味しいと感じていますが、性転換した後のワタシも同じように美味しいと思えるんだろかって…

ふと、考えてしまったんです。

真ちゃんの事が大好きで大好きで…

そんな思いでいられる自分の事を、自分で良いなあって思ってるんです。

多分、性転換してもこの気持ちは変わったり揺らいだりは絶対にしないと思いますが、本当のところはなってみないとわかりません。

真ちゃんもワタシと同じ気持ちでいてくれるんじゃないのかなあって…
だから、どっちでも良いって言ってくれたのかなって…
そう思えたんです。」


薫が話し終えると、多喜は何度も頷いた。


「そうだよ!
なんで俺が思ってる事がわかるんだよ!

俺は今の薫の事が好きになって結婚を申し込んだんだし、今の薫を心から愛してる…

これ以上のものはないって思ってるから、現状が変わってしまう事には、ちょっとだけ不安を感じるっていうか…

でも、薫がずっと女の子になりたいって気持ちを持っていたのもわかるし…

だから、どっちでもいいって言ってしまったんだ。」

多喜の思いを聞いて、薫は自分の選択が間違っていなかったと確信した。
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