ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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再起編

Spouse

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大西はベッドから手を伸ばし、携帯を取って画面を確認した。

「どうしたの?
こんな朝早くに…誰から?」

隣に寝ていた亮輔も目を覚まして起き上がり、大西に聞いた。


「鷹村先生からのメールだよ」


「鷹村先生?」


「ああ。

オヤジ…いや、多村が出所するらしい。」


「えっ、ウソ…

もう出られるの?」


「なんかわかんねえけど、鷹村先生の情報は間違いがねえからな。

来週だってさ。」


「あなた…
大丈夫かしら…」

亮輔が不安そうに言うと、大西は亮輔の髪を撫でながら頷いた。

「もう多村を支える組もなければ、支援する団体もねえ。

それに女になった多村には、個人で現状を打破する力も持ってねえよ。

心配は要らない。」


「そうね。

ワタシもそう思うわ。
自分自身、女として暮らしてみて、昔のようなギラついたものも残ってないし、とにかく臆病になってしまったもの。」


亮輔は、自分の胸の膨らみを見つめながら、呟くように言った。


「そうだな。
多村も余生は女として慎ましく生きて欲しいもんだよ。

沙織みたいに改名してな。

ところで、前から聞こう聞こうと思いつつ、いつも忘れてたんだけど、沙織はなんでその名前にしたんだ?

亮輔から綾香に改名でもすんのかなぁって思ってたけど。」


「あのねえ、さすがに綾香には出来ないよ。
顔も一緒だし、ややこしいじゃん。

それに、あの無意味な抗争の原因の一つとなった綾香の名前を貰うわけにはいかないわよ。」


「まあ、そうだな。

あっ、今日は多喜夫婦の店の開店日だった!」


「あ、ホントね。」


「事務所に出る前に、ちょっと立ち寄ってみるか」


「うん。」

亮輔は笑みを浮かべて返事すると、甘えた表情で大西にキスをした。






「薫、スープの火加減見てくれる?」
 

ハチマキ姿で半袖、腰にエプロンを巻いた多喜ごが指示すると、薫は寸胴を覗き込み、二、三回かき混ぜると

「真ちゃん、うん

大丈夫よ」

と、答えた。


出所してから三年の月日が流れ、多喜と薫の夫婦は、自宅近くに自分の店をオープンさせた。

店名は「薫風」
ラーメン店だ。

キャバクラの店長をしていた時、よく通ったラーメン店があり、そこで雇ってもらって修行を重ねたのだ。
多喜が働き出して一年ほどすると、体が回復した薫も店にバイトとして働くようになり、多喜と共に一からラーメン作りを学んでいった。

そして、今年になり、暖簾分けの許しをもらい、多喜と薫は自分たちの店をオープンするに至ったのだった。
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