ニューハーフ極道ZERO

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代理戦争編

素性

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「大西さん、どうされましたか?」

鷹村が大西に聞くと、大西は少し迷った様子だったが、話を続けた。


「鷹村先生、間違ってたら申し訳ないんですが、あなたは垂水組の顧問弁護士とかではなくて、垂水組の構成員なのでは?」

亮輔は驚いて、大西の方を見たが、大西は気にする様子もなく鷹村を見つめていた。

「はっはっはっは

大西さん、面白い事をおっしゃいますね。


当たっていますけど。」


「やっぱり。

噂を聞いた事があるんです。

施設育ちの貴方は十五歳の時に垂水組の先代の組長 三浦賢吾に気に入られ、垂水組の構成員となった。

ろくに学校も出ていなかったあなただったが、驚くほど頭が良く、その頭脳のキレで度々三浦組長を驚かせ、その三浦組長の勧めで高校に通い直し、大学を出て司法試験に合格。
弁護士の道に進んだと…」


「よくご存知で。

タク弁やイソ弁なんて言葉がありますが、私のようなヤクザ出身の弁護士はゴク弁とでも言いましょうか」

鷹村はそう言ってまた笑った。

「大西さん、だからこそ私は今回の抗争がいかに危険かと、その成り行きを憂慮しているのです。

それに、もう一つお教えしとくと、警察も我々の味方です。」


「えっ、警察が?」


「そうです。

現代社会においては、警察は暴力団の封じ込めに必死になっているなんて、巷で言われていますが、あんなものはマスコミ向けの上辺だけの話ですよ。

実際は堅固な協力関係にあります。

そもそもヤクザがここまで大きな組織になれたのも、戦後の焼け野原で、力を無くしていた警察を助けて不法行為を繰り返す外国人を取り締まったのが始まりなんですから。

今の世の中も全く同じ状況です。

昭和四十年代のヤクザの抗争から取り締まりを厳しくしていき、ヤクザを封じ込めようとした。

その結果、どうなりました?

警察の手の届かない外国マフィアが蔓延り、もっと治安を悪くしたんです。」


「たしかに…」


「警察の嫌がる事、たとえば違法な薬物、拳銃の密輸や使用、特殊詐欺などに手を出さずに、飲食店やちゃんと届出をした風俗店の経営などだけをしていれば、そこまでマークされることはないんです。
ですから、今はまた警察との関係が良好になってきていると申し上げておきましょう。」

「なるほど、よくわかります。」

大西は、鷹村の話に一々感心していたが、長居してはいけないと、立ち上がった。


「あ、そうそう。
肝心な事を言うのを忘れていました。

あなた方のお仲間の多喜さんでしたか…
彼の居場所がわかりましたよ。」


「えっ!本当ですか!」


「大阪市浪速区大国町…

あ、ここだ。」

鷹村は地図のコピーに指を差して言った。


「どうやってここを?」


「まあ、そういうことです。
現代の抗争は武力じゃない。情報を制するものが勝ちます。」


「ありがとうございます。」


「キム達が動き出せば、多村さんもどこかに身を隠すでしょうから、簡単に救出出来ると思います。
ケガの具合にもよりますが」


二人は垂水組という強い味方を得て、多村との対決に闘志を燃やした。
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