165 / 399
代理戦争編
殺気
しおりを挟む
多喜が目を覚ますと、そこは見たこともない部屋だった。
肩の痛みに耐えながら、周囲を見回すと、人相の悪いスーツ姿の男が座っていた。
「ようやく気付きはったんやな
安心してええよ。ここはウチの息のかかった病院やから、勿論モグリのやけど。」
「あなたは‥たしか」
「三宅組の白石です。」
「すいません、白石さん‥
俺は…」
「なんや、アンタ何も覚えてへんのか?」
「はい。」
「沢木組と街中で撃ち合いやりましたんやで。
この時代にな。」
多喜はは疼く肩を押さえて、必死に思い出そうとしたが、断片的な絵しか浮かんでこない。
(たしか‥沢木の車に追いつかれて…
赤石ってのが助手席から俺を狙って‥)
「そうだ…
俺は赤石に撃たれて…そのまま倒れ込んだんだ…」
「アンタが撃ったタマもその赤石っちゅーうのに命中したんやで。」
「えっ?」
「向こうも死んでないやろ。逃げて行きよったからな。
だが、アンタへの見張り役として付いてたウチの者が、アンタを車に乗せた後、もう一人の沢木組のやつを殺してしまいよったんや。
正当防衛やけどな、こっちに言わせれば
アンタを車に乗せようとしてるところを、撃ってきたんやから。
赤石は死んだ男を蹴り落として、車から放り出し、自分が運転して去ってった…
まあ、これが顛末や」
「そうだったんですか…
ご迷惑をおかけして誠に申し訳ないです。
ところで、オヤジ、いや多村社長は?」
「多村はんやったら、もうすぐここへ来まっさ。
アンタの事えらい心配してはったからな。
それと、とうとう本気になったみたいやで。
沢木潰しに」
「沢木を?」
「まあ、ワシら三宅組は沢木のせいで散々冷飯食わされてきたんや。
せやけど、この銃撃戦で、多村はんも沢木に対しては甘い事言うとったらあかんて思たんやろなあ。」
「ですが、沢木のバックには垂水組が…」
「そんなもん、ワシらにも立正会っちゅー立派な後見人がおるやないか。
ええか、多喜はん
ここまできたらな、組がでかい小さいは関係あらへん。
どっちが肚決めてやるかや!」
そのとき、白衣を着た男がドアを開けて入ってきた。
「多村さんが来られました。」
男の後ろから、多村がボディーガード二人を引き連れて顔を出した。
「よぉ、多喜
やっと目覚めたか
タマが肩を貫通してたんだよ、まあ命があってよかったな。」
「はい。ありがとうございます…」
「とはいえ、しばらくは動けんからここでゆっくりしとけよ。」
「は、はい」
「あ、そうだ
お前の恋人のニューハーフなあ
大西が俺を裏切って逃しやがったぜ」
「えっ?」
「あと、お前の奮戦のおかげで、亮輔と綾香も無事に逃げたらしいぜ。」
「…」
「まあ、いい。
全部じゃねえが、想定の範囲内だ。
悪いが、多喜、お前にはもう少し働いてもらわねえといけなくなったぜ。」
多村は笑みを浮かべていたが、その目は怒りに満ちていた。
肩の痛みに耐えながら、周囲を見回すと、人相の悪いスーツ姿の男が座っていた。
「ようやく気付きはったんやな
安心してええよ。ここはウチの息のかかった病院やから、勿論モグリのやけど。」
「あなたは‥たしか」
「三宅組の白石です。」
「すいません、白石さん‥
俺は…」
「なんや、アンタ何も覚えてへんのか?」
「はい。」
「沢木組と街中で撃ち合いやりましたんやで。
この時代にな。」
多喜はは疼く肩を押さえて、必死に思い出そうとしたが、断片的な絵しか浮かんでこない。
(たしか‥沢木の車に追いつかれて…
赤石ってのが助手席から俺を狙って‥)
「そうだ…
俺は赤石に撃たれて…そのまま倒れ込んだんだ…」
「アンタが撃ったタマもその赤石っちゅーうのに命中したんやで。」
「えっ?」
「向こうも死んでないやろ。逃げて行きよったからな。
だが、アンタへの見張り役として付いてたウチの者が、アンタを車に乗せた後、もう一人の沢木組のやつを殺してしまいよったんや。
正当防衛やけどな、こっちに言わせれば
アンタを車に乗せようとしてるところを、撃ってきたんやから。
赤石は死んだ男を蹴り落として、車から放り出し、自分が運転して去ってった…
まあ、これが顛末や」
「そうだったんですか…
ご迷惑をおかけして誠に申し訳ないです。
ところで、オヤジ、いや多村社長は?」
「多村はんやったら、もうすぐここへ来まっさ。
アンタの事えらい心配してはったからな。
それと、とうとう本気になったみたいやで。
沢木潰しに」
「沢木を?」
「まあ、ワシら三宅組は沢木のせいで散々冷飯食わされてきたんや。
せやけど、この銃撃戦で、多村はんも沢木に対しては甘い事言うとったらあかんて思たんやろなあ。」
「ですが、沢木のバックには垂水組が…」
「そんなもん、ワシらにも立正会っちゅー立派な後見人がおるやないか。
ええか、多喜はん
ここまできたらな、組がでかい小さいは関係あらへん。
どっちが肚決めてやるかや!」
そのとき、白衣を着た男がドアを開けて入ってきた。
「多村さんが来られました。」
男の後ろから、多村がボディーガード二人を引き連れて顔を出した。
「よぉ、多喜
やっと目覚めたか
タマが肩を貫通してたんだよ、まあ命があってよかったな。」
「はい。ありがとうございます…」
「とはいえ、しばらくは動けんからここでゆっくりしとけよ。」
「は、はい」
「あ、そうだ
お前の恋人のニューハーフなあ
大西が俺を裏切って逃しやがったぜ」
「えっ?」
「あと、お前の奮戦のおかげで、亮輔と綾香も無事に逃げたらしいぜ。」
「…」
「まあ、いい。
全部じゃねえが、想定の範囲内だ。
悪いが、多喜、お前にはもう少し働いてもらわねえといけなくなったぜ。」
多村は笑みを浮かべていたが、その目は怒りに満ちていた。
2
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説




ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる