ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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代理戦争編

殺気

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多喜が目を覚ますと、そこは見たこともない部屋だった。


肩の痛みに耐えながら、周囲を見回すと、人相の悪いスーツ姿の男が座っていた。


「ようやく気付きはったんやな
安心してええよ。ここはウチの息のかかった病院やから、勿論モグリのやけど。」


「あなたは‥たしか」


「三宅組の白石です。」


「すいません、白石さん‥
俺は…」


「なんや、アンタ何も覚えてへんのか?」


「はい。」


「沢木組と街中で撃ち合いやりましたんやで。
この時代にな。」


多喜はは疼く肩を押さえて、必死に思い出そうとしたが、断片的な絵しか浮かんでこない。


(たしか‥沢木の車に追いつかれて…

赤石ってのが助手席から俺を狙って‥)


「そうだ…

俺は赤石に撃たれて…そのまま倒れ込んだんだ…」


「アンタが撃ったタマもその赤石っちゅーうのに命中したんやで。」

「えっ?」

「向こうも死んでないやろ。逃げて行きよったからな。

だが、アンタへの見張り役として付いてたウチの者が、アンタを車に乗せた後、もう一人の沢木組のやつを殺してしまいよったんや。
正当防衛やけどな、こっちに言わせれば

アンタを車に乗せようとしてるところを、撃ってきたんやから。

赤石は死んだ男を蹴り落として、車から放り出し、自分が運転して去ってった…

まあ、これが顛末や」


「そうだったんですか…

ご迷惑をおかけして誠に申し訳ないです。

ところで、オヤジ、いや多村社長は?」


「多村はんやったら、もうすぐここへ来まっさ。

アンタの事えらい心配してはったからな。

それと、とうとう本気になったみたいやで。
沢木潰しに」


「沢木を?」


「まあ、ワシら三宅組は沢木のせいで散々冷飯食わされてきたんや。
せやけど、この銃撃戦で、多村はんも沢木に対しては甘い事言うとったらあかんて思たんやろなあ。」

「ですが、沢木のバックには垂水組が…」

「そんなもん、ワシらにも立正会っちゅー立派な後見人がおるやないか。

ええか、多喜はん

ここまできたらな、組がでかい小さいは関係あらへん。
どっちが肚決めてやるかや!」


そのとき、白衣を着た男がドアを開けて入ってきた。


「多村さんが来られました。」

男の後ろから、多村がボディーガード二人を引き連れて顔を出した。


「よぉ、多喜

やっと目覚めたか

タマが肩を貫通してたんだよ、まあ命があってよかったな。」


「はい。ありがとうございます…」


「とはいえ、しばらくは動けんからここでゆっくりしとけよ。」


「は、はい」


「あ、そうだ

お前の恋人のニューハーフなあ

大西が俺を裏切って逃しやがったぜ」


「えっ?」


「あと、お前の奮戦のおかげで、亮輔と綾香も無事に逃げたらしいぜ。」


「…」


「まあ、いい。

全部じゃねえが、想定の範囲内だ。
悪いが、多喜、お前にはもう少し働いてもらわねえといけなくなったぜ。」


多村は笑みを浮かべていたが、その目は怒りに満ちていた。
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