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代理戦争編

出立

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「綾香、そろそろ行くわ」

明け方、亮輔は綾香にそう告げると、ようやく着れる事になった男物のスーツに袖を通した。

「どうだ?似合ってるか?」

「うん!
あの頃の亮ちゃんそのものだよ。」

「俺もなんか自信が漲ってくるというか、玉抜かれて臆病になってた自分が嘘みたいだ。」

「亮ちゃん

死なないで…」


「ああ。

多喜と薫さんを救い出し、オヤジにはきっちり落とし前を付けさせてくるから。」

「多村は怪物よ
何を考えてるかわかんないけど、こちらの動きは手に取るように把握してる。

きっと今回の事もある程度予測してて、その上で次の手を打ってるかもしれない。

亮ちゃんが向こうに行くのもお見通しで、既に手を打ってるかも…」


「まあ、なるようになるさ。

だけど、今度こそ俺たちが勝つ番だ。」

亮輔はそう力強く答えると、綾香の肩を両手で持ち、唇を合わせた。

そして、この隠れ家を出て行った。

綾香はこれが亮輔との今生の別れになるのではないかと、内心不安で泣きそうになりながら、その後ろ姿を見守っていた。






(先ずは大西の兄貴とコンタクトを取るべきか…

いや、オヤジが掌握して兄貴を抱き込み、俺を罠にかけようとしていたら…)

亮輔は在来線特急から岡山で新幹線に乗り換え、その車中で考えを巡らせていた。

(多喜が無事なら…まだ手はあるが…) 


とにかく時間がない…そして、迷っている場合ではない。

亮輔は何の策もないまま、再び大阪の地に降り立った。

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