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代理戦争編
面目躍如
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準備をする時間の少なさに頭を悩ませながらも、多喜は段取りをつけ、ついに作戦決行の当日となった。
綾香と亮輔には連絡済みで、二人共監視役を同じやり方で撃退して逃げる事にしているが、これは事前の調査で監視役が一名だとわかっているからこそ可能な作戦なのだ。
もし、二人付いていたら、自分が加勢しなければならない。
亮輔は性転換され体力が落ちているとはいえ、元々極道をしていた人間だ。
危機的な場面でも、何とか乗り切る可能性がある。
しかし、綾香はフツーの女であり、失敗する可能性が高い。
だからこそ、多喜は綾香の方に回り、いつでも助け出せる状態にしていた。
午後2時過ぎ、多村は会合に出るために、事務所を出ていった。
多喜も、それを見届けると、多村から出ている指令、綾香を拉致するために立ち上がり、車のキーを取った。
毎日、不定期な時間に綾香の住むマンション周辺で張っていたので、この時間から外出しても誰にも疑われる事がないのは幸いであった。
それを見ていた大西は、多喜にだけわかるように小さく頷き、立ち上がった。
多喜は車を運転し、綾香の住むマンションに向かった。
上手くいったなら、綾香は多喜の待つ場所まで自力で辿り着かせ、車に乗せて新大阪駅まで連れていくという段取りだった。
多喜は、車を落ち合う約束をしている場所に停車させると、綾香が来るのをじりじりとしながら待った。
エンジンをかけたまま、窓から綾香の来るであろう方向をただ見つめる。
この時間がどれほど長く感じたことか…
多喜はしきり腕時計と窓の外を交互に見つめながら、綾香を待った。
「!!」
(来た!)
綾香が走って近づいてくる。
追手はいない…どうやら成功したようだ。
綾香は左の後部座席に転がり込むように乗り
「多喜さん!上手くやれたわ!
早く出して!」
と、叫ぶように言った。
「はいっ!」
多喜は車を急発進させ、すぐに大通りに出た。
「綾香さん、沢木の者は?」
「今日はお付きが一人だったわ。
ホントにラッキーよ、多喜さん
ワタシらツイてるわ」
綾香は息を切らせて声を上擦らせながら言った。
多喜も幸先が良いと、期待感を持ちながら、ルームミラーで綾香の姿を一瞥したが、すぐに表情が曇っていった。
「綾香さん、後ろ見てください!」
「えっ!」
綾香は多喜の言葉にビクッとして、慌てて後ろを振り返った。
「!!」
自分たちの車を猛スピードで追いかけてくる一台の車がいるではないか。
「沢木ですか?」
多喜は車のスピードを上げながら、後ろの綾香に聞いた。
綾香は頷き、顔色を変えて言った。
「赤石って人の車だわ!」
「信号に捕まったら終わりです。
すいません、次の角曲がったところで降ろしますから、一人で向かっていただけますか。」
「でも、多喜さんが…」
「いえ、自分が沢木を止めますので、その間にお願いします。
それに一人の方が乗り切れる可能性が高いですから。」
多喜は自分に言い聞かせるように言うと、車を左折させて、急停車させた。
「綾香さん、早く出て、走って!」
綾香は頷いてドアを開けて走り出した。
数秒して、赤石の車が猛スピードで突っ込んできた。
車から出て仁王立ち状態の多喜は、迫り来る赤石の車を見つめた。
「!!」
車には二人が乗っていた…
赤石は運転しておらず、助手席に座っていたのだ。
そして、多喜に向けて銃口を向けている。
助手席の窓から身を乗り出し銃を構える赤石…
多喜は悟った
赤石の表情に迷いはない。
間違いなく撃ってくる…
自分を撃って、その後、綾香を確保する気だ…
銃社会でもないこの日本の国道沿いで、乾いた銃声の音が聞こえた。
多喜はその身に激しい衝撃を受け、膝から崩れ落ちたのだった。
綾香と亮輔には連絡済みで、二人共監視役を同じやり方で撃退して逃げる事にしているが、これは事前の調査で監視役が一名だとわかっているからこそ可能な作戦なのだ。
もし、二人付いていたら、自分が加勢しなければならない。
亮輔は性転換され体力が落ちているとはいえ、元々極道をしていた人間だ。
危機的な場面でも、何とか乗り切る可能性がある。
しかし、綾香はフツーの女であり、失敗する可能性が高い。
だからこそ、多喜は綾香の方に回り、いつでも助け出せる状態にしていた。
午後2時過ぎ、多村は会合に出るために、事務所を出ていった。
多喜も、それを見届けると、多村から出ている指令、綾香を拉致するために立ち上がり、車のキーを取った。
毎日、不定期な時間に綾香の住むマンション周辺で張っていたので、この時間から外出しても誰にも疑われる事がないのは幸いであった。
それを見ていた大西は、多喜にだけわかるように小さく頷き、立ち上がった。
多喜は車を運転し、綾香の住むマンションに向かった。
上手くいったなら、綾香は多喜の待つ場所まで自力で辿り着かせ、車に乗せて新大阪駅まで連れていくという段取りだった。
多喜は、車を落ち合う約束をしている場所に停車させると、綾香が来るのをじりじりとしながら待った。
エンジンをかけたまま、窓から綾香の来るであろう方向をただ見つめる。
この時間がどれほど長く感じたことか…
多喜はしきり腕時計と窓の外を交互に見つめながら、綾香を待った。
「!!」
(来た!)
綾香が走って近づいてくる。
追手はいない…どうやら成功したようだ。
綾香は左の後部座席に転がり込むように乗り
「多喜さん!上手くやれたわ!
早く出して!」
と、叫ぶように言った。
「はいっ!」
多喜は車を急発進させ、すぐに大通りに出た。
「綾香さん、沢木の者は?」
「今日はお付きが一人だったわ。
ホントにラッキーよ、多喜さん
ワタシらツイてるわ」
綾香は息を切らせて声を上擦らせながら言った。
多喜も幸先が良いと、期待感を持ちながら、ルームミラーで綾香の姿を一瞥したが、すぐに表情が曇っていった。
「綾香さん、後ろ見てください!」
「えっ!」
綾香は多喜の言葉にビクッとして、慌てて後ろを振り返った。
「!!」
自分たちの車を猛スピードで追いかけてくる一台の車がいるではないか。
「沢木ですか?」
多喜は車のスピードを上げながら、後ろの綾香に聞いた。
綾香は頷き、顔色を変えて言った。
「赤石って人の車だわ!」
「信号に捕まったら終わりです。
すいません、次の角曲がったところで降ろしますから、一人で向かっていただけますか。」
「でも、多喜さんが…」
「いえ、自分が沢木を止めますので、その間にお願いします。
それに一人の方が乗り切れる可能性が高いですから。」
多喜は自分に言い聞かせるように言うと、車を左折させて、急停車させた。
「綾香さん、早く出て、走って!」
綾香は頷いてドアを開けて走り出した。
数秒して、赤石の車が猛スピードで突っ込んできた。
車から出て仁王立ち状態の多喜は、迫り来る赤石の車を見つめた。
「!!」
車には二人が乗っていた…
赤石は運転しておらず、助手席に座っていたのだ。
そして、多喜に向けて銃口を向けている。
助手席の窓から身を乗り出し銃を構える赤石…
多喜は悟った
赤石の表情に迷いはない。
間違いなく撃ってくる…
自分を撃って、その後、綾香を確保する気だ…
銃社会でもないこの日本の国道沿いで、乾いた銃声の音が聞こえた。
多喜はその身に激しい衝撃を受け、膝から崩れ落ちたのだった。
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