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鹵獲編
舎弟
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翌日、薫は、早速弟分だった赤石功太を組事務所近くの喫茶店に呼び出した。
「功太、忙しのに呼び出しちゃってごめんね。」
「いえ、別に忙しくないですし‥
ところで、どないしはったんですか。」
「うん、実は‥」
薫は、昨日、多喜から聞いた話を説明した。
「なるほど。それやったら三宅組の最近の動きとか、辻褄が合うてきますわ。
でも、そんな情報、どこで聞いたんですか?」
「ワタシ、結婚するって、この前姐さんの家に行ったときに話したでしょ。
その相手っていうのが、多村組の人なの。」
「えっ、それは‥
ホンマの話ですか!?」
功太は、薫のあまりにも意外な話を聞き、唖然とした。
「そうなの。でも、彼は無用な争いは望んでないし、なんとか抗争を防ぎたいっていう考えでいるの。
だから、沢木組とコンタクトを取りたくて‥」
「なんとなく、話はわかりましたけど。
戦争になるんやったら、こっちは一歩も引くことはできまへんで。」
「ワタシだって、沢木組でお世話になった人間よ。その辺の事はよくわかってるわ。
でも、そうならないように最大限努力したいのよ。」
「まあ、それはそうでっけど
こっちはどないしたらええんですか?」
「先ずは、庄山さんの愛人の、綾香って女の人を守ってあげて。
多村って男は、その人に異常に執着してて、奪還の為だったら手段を選ばない。」
「その事については、俺もようわかってるつもりなんですけど、今、オヤジが服役中で、不在になってるがために、他の人らがあんまり真剣に考えてへんていうか‥
でも、俺がなんとかします。」
「ありがとう、功太。」
「他には?」
「近いうちに、その多村って組長が表向きの引退宣言をするらしいの。
その後、多村組の何人かは三宅組に転籍して、こっちのシマを荒らすっていう噂があるわ。」
「そんな話がありまんのか!」
「この事を上に報告して、垂水組に介入してもらってほしいの。
垂水組が出てきたら、なかなかヘタな動きは出来ないと思うし。」
「いや、垂水組は警察の的にかけられてて、なかなか動けへん状況ですわ。
まあ、でも、奴らがそういう動きするんやったら、こっちも受けて立つしかないですやろ!」
「そんな事したら、多村の思う壺よ。」
「兄貴、あんだけケンカが強うて、怖いもの無しやったのに、すっかり変わってしまいましたなあ。」
「そうね。今はもう筋力も落ちちゃったし、臆病になってしまったし、昔のワタシからは程遠いわ。」
「わかりました。
俺もあれから少しは成長したつもりです。
出来る限りの事はします。
兄貴はその多村の組の男と幸せになって下さい。」
「ありがとう‥」
功太は薫の変わり様に、一抹の寂しさを感じながらも、怒りと冷静さをもって、この事態に立ち向かう事を心に誓った。
「功太、忙しのに呼び出しちゃってごめんね。」
「いえ、別に忙しくないですし‥
ところで、どないしはったんですか。」
「うん、実は‥」
薫は、昨日、多喜から聞いた話を説明した。
「なるほど。それやったら三宅組の最近の動きとか、辻褄が合うてきますわ。
でも、そんな情報、どこで聞いたんですか?」
「ワタシ、結婚するって、この前姐さんの家に行ったときに話したでしょ。
その相手っていうのが、多村組の人なの。」
「えっ、それは‥
ホンマの話ですか!?」
功太は、薫のあまりにも意外な話を聞き、唖然とした。
「そうなの。でも、彼は無用な争いは望んでないし、なんとか抗争を防ぎたいっていう考えでいるの。
だから、沢木組とコンタクトを取りたくて‥」
「なんとなく、話はわかりましたけど。
戦争になるんやったら、こっちは一歩も引くことはできまへんで。」
「ワタシだって、沢木組でお世話になった人間よ。その辺の事はよくわかってるわ。
でも、そうならないように最大限努力したいのよ。」
「まあ、それはそうでっけど
こっちはどないしたらええんですか?」
「先ずは、庄山さんの愛人の、綾香って女の人を守ってあげて。
多村って男は、その人に異常に執着してて、奪還の為だったら手段を選ばない。」
「その事については、俺もようわかってるつもりなんですけど、今、オヤジが服役中で、不在になってるがために、他の人らがあんまり真剣に考えてへんていうか‥
でも、俺がなんとかします。」
「ありがとう、功太。」
「他には?」
「近いうちに、その多村って組長が表向きの引退宣言をするらしいの。
その後、多村組の何人かは三宅組に転籍して、こっちのシマを荒らすっていう噂があるわ。」
「そんな話がありまんのか!」
「この事を上に報告して、垂水組に介入してもらってほしいの。
垂水組が出てきたら、なかなかヘタな動きは出来ないと思うし。」
「いや、垂水組は警察の的にかけられてて、なかなか動けへん状況ですわ。
まあ、でも、奴らがそういう動きするんやったら、こっちも受けて立つしかないですやろ!」
「そんな事したら、多村の思う壺よ。」
「兄貴、あんだけケンカが強うて、怖いもの無しやったのに、すっかり変わってしまいましたなあ。」
「そうね。今はもう筋力も落ちちゃったし、臆病になってしまったし、昔のワタシからは程遠いわ。」
「わかりました。
俺もあれから少しは成長したつもりです。
出来る限りの事はします。
兄貴はその多村の組の男と幸せになって下さい。」
「ありがとう‥」
功太は薫の変わり様に、一抹の寂しさを感じながらも、怒りと冷静さをもって、この事態に立ち向かう事を心に誓った。
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