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鹵獲編
八面六臂
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綾香を確保し損ねた翌日、多喜以外の全員が東京に戻っていった。
「真ちゃん、どうしたの?」
仕事を終えて帰宅した多喜の浮かない表情を心配して、薫が話しかけた。
「あ、いや、何でも‥」
一瞬、多喜は躊躇したが、思い直して話を続けた。
「薫、沢木組で、今でも連絡を取り合ってる人間ている?」
「全然いないよ。ワタシとしては断ち切りたい過去だから。
でも、少し前に姐さんの家に行ったんだけど、そのときに弟分だった人も来てて、少しお話したよ。」
「そうか。じゃあ、その弟分に伝えて欲しい事があるんだけど‥
いいかな?」
「えっ、うん‥」
「昨日、オヤジの愛人だった女を確保しようとして、失敗したんだ。」
「そう言ってたよね‥」
「だけど、ウチのオヤジは諦めてないし、次はもっと汚い手を使ってくると思う。」
「‥」
「ここからは、あくまでも俺の予想で言う話だから、必ずしもそうなるとは限らない。
けど、常に最悪の事態を想定して動いとかないと、後で取り返しのつかない事になる‥
オヤジは今、東京に戻ってるんだけど、近いうちに警察に行き、引退宣言をすると思う。
だけど、組織としては何も変わっちゃいない。
オヤジは、カタギの会社の社長には居座り続けるんだから。
そして、これを機に、多村組の何割かは、大阪の三宅組に転籍する。」
「と、いうことは‥」
「沢木と、真っ正面からの戦争になる。
それも、オヤジ‥多村組長は手を汚さずして。」
「本当にそうなる?」
「わからないけど、多分その方向に動いてく筈だよ。
だから、沢木に必ず伝えて欲しいのは、綾香って女をちゃんと保護して、多村組の手に渡さない事。先ずはこれが大前提となる。」
「わかったわ。明日にでも伝えておくね。」
「うん。薫にはそれを伝えて欲しいんだけど、その後はもう、沢木には近づかないで欲しい。
絶対危ない事になるから。」
「そんな‥だったら真ちゃんはどうなるの?
一番危険な場所にいるのよ。」
「俺は大丈夫。男だし、こういうことには慣れてる。
いざとなったら組を抜けようと思ってるしね。」
「約束だよ。ぜったい無理しないでね。」
「ああ、薫と幸せな生活を送るのが俺のゆめだから。」
「ワタシ、真ちゃんがいれば何も要らないから
それ以上の幸せはないもの。」
「薫‥」
多喜は薫を自分の元に引き寄せ、つよく抱きしめた。
「真ちゃん、どうしたの?」
仕事を終えて帰宅した多喜の浮かない表情を心配して、薫が話しかけた。
「あ、いや、何でも‥」
一瞬、多喜は躊躇したが、思い直して話を続けた。
「薫、沢木組で、今でも連絡を取り合ってる人間ている?」
「全然いないよ。ワタシとしては断ち切りたい過去だから。
でも、少し前に姐さんの家に行ったんだけど、そのときに弟分だった人も来てて、少しお話したよ。」
「そうか。じゃあ、その弟分に伝えて欲しい事があるんだけど‥
いいかな?」
「えっ、うん‥」
「昨日、オヤジの愛人だった女を確保しようとして、失敗したんだ。」
「そう言ってたよね‥」
「だけど、ウチのオヤジは諦めてないし、次はもっと汚い手を使ってくると思う。」
「‥」
「ここからは、あくまでも俺の予想で言う話だから、必ずしもそうなるとは限らない。
けど、常に最悪の事態を想定して動いとかないと、後で取り返しのつかない事になる‥
オヤジは今、東京に戻ってるんだけど、近いうちに警察に行き、引退宣言をすると思う。
だけど、組織としては何も変わっちゃいない。
オヤジは、カタギの会社の社長には居座り続けるんだから。
そして、これを機に、多村組の何割かは、大阪の三宅組に転籍する。」
「と、いうことは‥」
「沢木と、真っ正面からの戦争になる。
それも、オヤジ‥多村組長は手を汚さずして。」
「本当にそうなる?」
「わからないけど、多分その方向に動いてく筈だよ。
だから、沢木に必ず伝えて欲しいのは、綾香って女をちゃんと保護して、多村組の手に渡さない事。先ずはこれが大前提となる。」
「わかったわ。明日にでも伝えておくね。」
「うん。薫にはそれを伝えて欲しいんだけど、その後はもう、沢木には近づかないで欲しい。
絶対危ない事になるから。」
「そんな‥だったら真ちゃんはどうなるの?
一番危険な場所にいるのよ。」
「俺は大丈夫。男だし、こういうことには慣れてる。
いざとなったら組を抜けようと思ってるしね。」
「約束だよ。ぜったい無理しないでね。」
「ああ、薫と幸せな生活を送るのが俺のゆめだから。」
「ワタシ、真ちゃんがいれば何も要らないから
それ以上の幸せはないもの。」
「薫‥」
多喜は薫を自分の元に引き寄せ、つよく抱きしめた。
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