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鹵獲編
Philadelphia experiment
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「亮ちゃん、私、もうこんな生活にウンザリしてんのよ。
だから、一緒に逃げない?」
綾香の言葉に、亮輔は耳を疑った。
「綾香、何の話してるの?
そんなのムリに決まってるじゃない。捕まって二人共殺されるのがオチよ。」
「亮ちゃん、男に戻りたくない?」
「えっ?
ちゃんと元通りになるなら戻りたいけど、もう去勢もされてるし、戻しようがないわ、ワタシの体は。」
「それが戻せるかもしれないのよ。」
「綾香、冗談はよして。そんな夢みたいな話あるわけないわ。
ワタシはもう諦めて、女として生きていく覚悟も決めてるの。すっかり調教もされちゃったし‥
からかうのはやめて。」
「信じるか信じないかは亮ちゃん次第よ。」
「‥」
「私がこっちに逃げてきてキャバで働いてるとき、常連のお客さんでどっかの医大の元教授っていう人がいたの。
調べたらわかると思うけど、なんか、再生医療の旗手って言われてる人よ。
その人がね、亮ちゃんみたいな体になった人を戻せる薬を開発したっていう話を聞いたの。」
「ちょっと、綾香。
そんなことあるわけないよ。話が本当だとしたら、スゴすぎる発明じゃないの?
そんな話がネットやテレビで出てるのを、全然見ないのはどういうこと?」
「それはそうだけど、本人が言うには、倫理的な問題と、副作用の問題がクリア出来てないから学会でも未発表なんだって。
一番はその人、お金を横領しちゃって捕まったのが原因なんだけど。」
「怪しすぎるわ。」
「私、この目でちゃんと見たのよ。」
「ごめん、綾香。やっぱり信じられないわ。」
「亮ちゃん、信じて。
だって、私自身が実験台となった張本人なんだから。」
「えっ?」
「亮ちゃん、私の背中に大きな傷跡があったの覚えてる?」
「うん‥」
「子供の時、毒親から虐待受けた時に付けられた傷で、ずっとコンプレックスだったのよ。
背中の開いたドレスなんかも一切着られなかったしね。
その話をしてみたら、一度研究室に来いって言ってくれて。
傷の部分に注射を打ってくれたの。
どうなったと思う?
二日後には完全に傷跡は消えたわ。
まさに、跡形もなくね。」
「ウソ‥」
「ホントよ。亮ちゃん、男に戻れたら、今のその感情なんてウソだって気付くから。
だから、お願い」
綾香はいつになく、熱くなって言った。
「綾香、また電話するわ‥」
亮輔は何も答えを出さず、それだけ言って電話を切った。
(そんなことがホントにある?
沢木組が仕組んだ罠?)
複雑な思いの中、すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
だから、一緒に逃げない?」
綾香の言葉に、亮輔は耳を疑った。
「綾香、何の話してるの?
そんなのムリに決まってるじゃない。捕まって二人共殺されるのがオチよ。」
「亮ちゃん、男に戻りたくない?」
「えっ?
ちゃんと元通りになるなら戻りたいけど、もう去勢もされてるし、戻しようがないわ、ワタシの体は。」
「それが戻せるかもしれないのよ。」
「綾香、冗談はよして。そんな夢みたいな話あるわけないわ。
ワタシはもう諦めて、女として生きていく覚悟も決めてるの。すっかり調教もされちゃったし‥
からかうのはやめて。」
「信じるか信じないかは亮ちゃん次第よ。」
「‥」
「私がこっちに逃げてきてキャバで働いてるとき、常連のお客さんでどっかの医大の元教授っていう人がいたの。
調べたらわかると思うけど、なんか、再生医療の旗手って言われてる人よ。
その人がね、亮ちゃんみたいな体になった人を戻せる薬を開発したっていう話を聞いたの。」
「ちょっと、綾香。
そんなことあるわけないよ。話が本当だとしたら、スゴすぎる発明じゃないの?
そんな話がネットやテレビで出てるのを、全然見ないのはどういうこと?」
「それはそうだけど、本人が言うには、倫理的な問題と、副作用の問題がクリア出来てないから学会でも未発表なんだって。
一番はその人、お金を横領しちゃって捕まったのが原因なんだけど。」
「怪しすぎるわ。」
「私、この目でちゃんと見たのよ。」
「ごめん、綾香。やっぱり信じられないわ。」
「亮ちゃん、信じて。
だって、私自身が実験台となった張本人なんだから。」
「えっ?」
「亮ちゃん、私の背中に大きな傷跡があったの覚えてる?」
「うん‥」
「子供の時、毒親から虐待受けた時に付けられた傷で、ずっとコンプレックスだったのよ。
背中の開いたドレスなんかも一切着られなかったしね。
その話をしてみたら、一度研究室に来いって言ってくれて。
傷の部分に注射を打ってくれたの。
どうなったと思う?
二日後には完全に傷跡は消えたわ。
まさに、跡形もなくね。」
「ウソ‥」
「ホントよ。亮ちゃん、男に戻れたら、今のその感情なんてウソだって気付くから。
だから、お願い」
綾香はいつになく、熱くなって言った。
「綾香、また電話するわ‥」
亮輔は何も答えを出さず、それだけ言って電話を切った。
(そんなことがホントにある?
沢木組が仕組んだ罠?)
複雑な思いの中、すっかり冷めてしまったコーヒーを一口飲んだ。
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