ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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鹵獲編

申し出

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「なんだ、多喜、話ってのは?」

その日の午後、多喜は、事務所を訪れた多村に、二人きりで話す機会を得ていた。

「社長、すいません、時間を取っていただいて。
実は、組を抜けさせていただきたく思いまして。」

「ほう、辞めたいのか」

「はい。
社長には、大変お世話になり、感謝の言葉もございません。
ただ、自分はやっぱり極道には向いていないという事が常々頭にありまして‥」

「そうか。それなら仕方ないな。」

妙に聞き分けの良い多村の反応に、少し拍子抜けした多喜は、戸惑いながらも念押しをした。

「社長、それでは、私が辞める事を認めて下さると」

「ああ、辞めてえ奴を無理矢理働かせるほどウチもブラックじゃねえからな。」

とんでもないブラックであったが。

「ありがとうございます!」

「ただな、多喜。
専務はどうするよ?」

「亮輔‥いえ、専務がどうかしましたか?」

「アイツとお前は昔から仲良くてよ、親友だったよな。

俺がアイツを許したのはそれがあったからだ。」

「どういう事ですか?」

「アイツは俺の女をコソコソと寝取りやがったがために、罰として男としての尊厳を奪ってやった。」

「それはよく知っています。」

「多喜よ、俺の性格を知ってるだろ?
それくらいの事でアイツを許すと思ってんのか?
ぶっ殺しても殺し足りねえよ。」

「‥」

「多喜、俺はな、お前を買ってんだぜ。
お前はヤクザには珍しく、情が厚くて真面目な男だ。
生まれ育った環境さえまともなら、公務員にでもなってたんじゃねえかと思うよ。
だからこそ、お前の実直さは何にも得難いもんだと思い、亮輔を風俗に堕としたときも、お前だけには居場所を教えてやったんだ。

だから、お前が組抜けるんなら、俺のストッパーは無くなるってわけだ。」

「待って下さい!」

「多喜、俺は亮輔の事を可愛がってはいるが、たまに無性に腹が立って、殺したい衝動に駆られるときがあんだよ。
やっぱり、あの事が許せねえんだ。

それでも、俺の計画には必要であるし、お前の顔に免じてやってる事もあるから、なんとか自分を抑えてきた。

お前がいなくなっちまったら、これまで通り我慢出来るか自信がねえよ。」

「そんな‥」

「いや、そんな事はお前には関係ねえ話だよな。
まあ、今までよくやってくれた。
ご苦労さん。」

多村はそう言うと、タバコを灰皿で揉み消して立ち上がり、去っていった。
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