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大阪抗争編
匂い
しおりを挟む赤石は仰向けに寝かされた亮輔に向かって言った。
「あんた、今、俺が何を考えてるかわかるか?」
「…」
「俺は不思議な感覚に陥ってるねん…」
さっきまで無口だった赤石が、急にしゃべり始めた。
「俺には組に入ったときから、よく面倒を見てくれた兄貴分がおった。
その人は女みたいな顔をしてんのにケンカがめっちゃ強くてな… 俺は憧れの目でいつも見てたんや。
けど、その人は、ある日、組を辞めて姿を消してしもた。
あんたみたいにニューハーフになるためにな…」
「…」
亮輔は赤石が何故、こんな話を自分にするのか理解出来ず、驚いた表情を浮かべて、ただ見つめるのみであった。
「俺は立ち直れんくらいショックを受けたが、今はただ、兄貴に会いたくて仕方ないんや。」
「…」
「… 確かに私と共通項は多いようね…
私も元々極道だし…」
「やっぱりそうか… 俺がお前から感じた兄貴と同じ匂いのようなものは… そういう事やったんやな。」
「いいえ。私とあなたの兄貴との間には
決定的な違いがあるわ。
あなたの兄貴は自らすすんでニューハーフになったのに対して、私は強制的に性転換されてしまったのよ。罰としてね。」
「なんやて!?」
「私を女に変えてしまった人はとても恐ろしい人よ。綾香一人のために、組と組とが激しい抗争になることも全く厭わないわ。
私はそうなるのを防ぎたいのよ!
だから… 私を解放してくれないなら、せめて、綾香を安全な場所に逃げさせて!」
「だいたい話が見えてきたよ。お前が何故綾香と同じ顔をしているのかも、ようやく理解出来た。
心配するな。
綾香はこういう事態になる事を見越して、安全なところにおるわ。
店もとっくに辞めとる。」
そう言った赤石だったが、顔に少し不安の色が見えた。
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