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沢木組編

羽化

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「わかった? 薫、私はあんたと同じなんやで…」 

「姐さん…」 

小百合のそれはかなり小ぶりで去勢もされていたが、まぎれもなく男性器であった。 

「私は、元々ミナミでニューハーフをしてたんや。 
まだ十八やったわ。
そんなある日、沢木が店に来てな 
えらい気に入られてしもて… 結局一緒になったんや。 
私がニューハーフやいうことは沢木以外は誰も知らん。」 

小百合はパンティを履き直しながら言った。 

「誰も気づかんはずです… 姐さんは、どっからどう見ても女性ですもん。」 

「私は沢木と一緒になってから、ちゃんと女になりたくて、下を取る手術をさせて欲しいって何べんも言うたんやけど、沢木はそれだけは許してくれへんかった…」 

「なんでですか?」 

「沢木の性癖やろなあ。付いてるほうがええみたいやった。」 

「…」 

「あんたがいつも沢木を送り迎えしてた、阿波座に住んでる… 何とかっていう名前の子、おったやろ? あれも私と一緒や」 

「ニューハーフ…?」 

薫の言葉に小百合は頷いた。 

「だから、私にはあんたの気持ちが痛いほどわかる… 

何があったかは知らんけど、今まで苦しんできたんや。 
もう充分や」 

思いがけない小百合の告白と、自分に対する優しい言葉に、薫はポロポロと涙を流した。 

「姐さん… ありがとうございます…」 

小百合は笑って薫の肩を叩いた。 

「薫、あんたの事は『big』のママに頼んだあるから、そこで修行したらええ。 ええな?」 

「はい、本当にありがとうございます…」 

「実を言うとな、私もあの店におったんや。」 


翌日、臨時の幹部会で、服役中の庄山が次の組長に就任する事と、薫の破門が決定された。薫の破門については異議が続出したが、小百合は強引に押し通した。 
夫の死を全て薫のせいにしていると、他の連中は彼女の事を悪く言ったが、頑として受け入れなかった。 

こうして、薫の三年に渡って続けていた極道生活に終止符が打たれ、新たなる道へ再スタートすることとなった。 

やや回り道をした感があったが、薫はそれで良いと思った。 

自分の母への後ろめたさや、贖罪の気持ちを消化させるためには、それだけの期間が必要だったからだ。 
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