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飛び地
しおりを挟む「どうせ、そんな事だろうと思ったぜ。
免田のガキめ!麻生組の庇護を受けてるからって調子に乗りやがって!」
社長室で亮輔の報告を聞いた多村は苛立った表情で机を叩いた。
「でも、あなた… 挑発に乗ってしまったら向こうの思うツボなんじゃ…」
「わかっている。麻生みたいなザコを相手にしても意味がねえからな。
まあ、こういう商売にもヤクザが全て絡んでるもんだ。
そして、何処も例外なく広域暴力団の傘下に入ってるから、簡単には戦争する事も出来ん。
外国マフィアは別としてな。
だが、今回の事は、早期に計画を実行に移すきっかけになった事は間違いねぇ。」
「きっかけ?」
「俺はヤクザでありビジネスマンでもある。昔なら、半々の力の入れ具合で良かっただろうが、今じゃ新暴対法のおかげで、ヤクザとしては表立って生きていけねえ。
ただし、法律なんてもんは必ず抜け道があるもんだ。
あの計画を実行に移す時が来たってわけだ。
綾香、お前にも力を貸してもらわねばならん。 さあ、今日は帰るぞ。」
多村は煙草を消して立ち上がると、部屋を出ていった。
(あの計画って… まさか…)
亮輔は不安な気持ちに包まれながら多村の後に続いた。
翌日、多村、亮輔、多喜とボディガード二人は新幹線の中にいた。
「社長、何処へ向かっているんですか?」
亮輔は多村の真意が理解出来ず、この期に及んで、まだ質問を浴びせていた。
「心配するな。 元々の計画が早まっただけだ。」
亮輔も多喜も、行き先が大阪であるということは、言われなくてもわかっていた。
「ですが社長、この時期に抗争中の西に行くのは‥」
多喜が言いにくそうにではあるが、多村に意見した。
「多喜、お前も今は多村興業の社員だろ?
抗争がどうのこうのよりら金になる話があればとことん追求するのは、この世界では当たり前の話だ。
いい加減に頭を極道からビジネスマンに切り替えろ!」
「はい…すいません。」
多喜は黙ってしまった。
だが、亮輔にはわかっていた。これはビジネスでも何でもない。多村の私怨によるものだということを…
「綾香、新大阪に着いたら立正会の連中が迎えに来てくれてるはずだ。その足でミナミに向かうぞ。」
「はい。」
立正会‥
自分達はこの立正会の傘下に入っており、逃亡中の綾香は、立正会の敵対勢力の一員である沢木組から保護されているはず‥
間違いなく、多村は本物の綾香に制裁を加えるつもりだ。
大阪が近づくにつれ、亮輔の気持ちは一気に沈んでいった。
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