ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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再提案

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「お早うございます。お母さん 、昨日はよく眠れましたか?」 

朝食をとるためにダイニングに現れた多村は 
亮輔と一緒にキッチンで準備をする美沙子に声をかけた。 

「お早うございます。おかげさまでぐっすり 
寝かせていただきました。」 

美沙子は毎度の如く、深々と頭を下げた。 

「それは良かった。ところで、お母さん 

昼頃まで、亮輔と出掛けてきてよろしいですか? 

式の事とか、少し現地で打ち合わせをしておきたくてね。」 

「どうぞどうぞ、私は部屋の掃除でもしておきますので…」 

美沙子が答えると、亮輔は意外な顔をして多村を見た。そんなことは何も聞いていなかったからだ。 

朝食を食べ終わると、片付けは美沙子に任せ、亮輔は慌ただしく準備をして、多村に付いて出て行った。 
ガレージに行くと、何故か運転手が来ておらず、多村自らがハンドルを握った。 

「あなた… どうしたんですか? 急に出掛けるなんて…」 

亮輔は助手席でシートベルトをはめながら、多村の方をチラッと見た。 

「いや、本当に式の打ち合わせをしておきたくてな。」 

多村は車を走らせながらポツリと言った。 

「家では話せないんですか?」 

「お母さんがいるだろ…」 

「…」 

「実は綾香の事なんだがな…」 

「えっ…」 

今の亮輔には、一番聞きたくない名前が多村の口から出て来た。 

「前にも言ったように、アイツは今大阪にいる。 それも沢木のシマにな。まあ、そんなことはどうでもいいんだ。 

昨日俺がお前に話した事はウソじゃねえんだから。今の俺はお前だけを愛してるんだし… 
ただな…」 

「ただ…?」 

「俺と綾香が付き合ってたのは皆が知ってる。 お前がアイツを寝取って制裁を加えられたことによって、尚更アイツの存在がクローズアップされた感もあるしな…」 

「…」 

「亮輔、俺が何を言いたいのかわかるか?」 

「いえ…」 

「組の連中の大部分は綾香が逃げたのを知らねえんだ。知ってるのは、見張りに付いてた男二人と、俺とお前の四人だけだ。」 

「はい…」 

「実はな、昨日の夜、お前と話してから、あまり眠れずにずっと考えてたんだが…」 

いつになく、多村の目に力が無いのが、亮輔には気になって仕方なかった。
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