ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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孝行

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「なんだ、亮輔か。どうした?」 

電話の向こうから、不機嫌そうに話す多村の声が聞こえてきた。 

「いえ、あの、母親の件で、気を遣っていただいて有難うございます。」 

亮輔は電話だというのに、深々と頭を下げた。 

「何を言ってるんだよ。最近は俺も忙しくて 
そっちに帰ってやれんからな。不安にしてたんじゃないか?」 

「いえ、準備の方は大丈夫です。でも、母に会う機会を作っていただいて、有り難く思ってます。」 

「結婚したら、俺にとっても母親になるんだからな。 
まあ年はそんなに変わらんが。 
仕事のカタがついたら、そっちに行くから三人で飯でも食おうや。」 

そう言って、多村は豪快に笑った。 

「本当に有難うございます。」 

「そうだ。亮輔、お母さんを連れて温泉にでも行ってこいよ。」 

「いえ、そんな…」 

「色々苦労かけたんだろ?結婚前に親孝行してあげろ。 
よし、俺が手配しといてやるから。 
明日にでも出発すればいい。」 

「… 有難うございます…」 

「じゃあ、お前らが旅行から帰って来る頃に 
俺もそっちに戻れるようにするよ。じゃあな。」 

多村は一方的に喋って電話を切ってしまった。 

「どうしたの?亮輔」 

キッチンから美沙子が顔を出して亮輔に言った。 

「うん。あの人がね、母ちゃん連れて温泉に行って来いって。」 

「えっ?母さんは亮輔の手伝いをしに来ただけなのよ。温泉なんて…」 

「あの人、言い出したら聞かないかし。手配もしてくれるみたいだから、ね?」 

「そうかい… なんだか申し訳ないねえ。」 

「明日出発するから。」 

「亮輔、いい人と一緒になれて良かったね。 気遣って、お前に会う機会を作ってくれたり 、その上温泉まで…」 

「うん…」 

多村に対して感謝する母親を見ながら、亮輔は少し複雑な表情を浮かべた。 

自分の意思ではなく、多村からの制裁により、体を女に変えられてしまったのだから、本当だったら感謝なんてしなくていいのだ。 

だが、今の亮輔は多村を心から愛し、必要としている。 
それは紛れもない事実であり、決して否定することは出来ない。 

全てを甘んじて受け入れようとする女の姿がそこにあった。
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