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隠匿

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家に戻ってきて、服を脱ぎ捨て、化粧を落とす亮輔だったが、携帯が鳴ったために、ビクッとして思わず声を出した。 

電話の主が綾香だった。 

「もしもし、綾香!大丈夫だったの!?」 

亮輔は電話に出るなり、上擦った声で綾香に問いかけた。 

「うん。大丈夫よ。今東京駅…もうすぐ新幹線が出るわ。」 

「心配したわ…」 

「亮ちゃんがマンションのエントランスに出て行って、男達がそっちに気を取られてる間に、うまく逃げ出せたわ。」 

亮輔はホッとして言った。 

「よかった… 綾香、どうか無事でいてね… 幸せになるのよ…」 

綾香は少し涙声で返事をした。 

「ありがとう…亮ちゃん。 パパのことだから、また亮ちゃんを疑って色々聞いてくると思うけど… 
ホント迷惑かけてごめんなさい。」 

「いや、私の事は心配しないで。 
なんとかするから。 

それよりも今は自分の事だけを考えるのよ。」 

「うん。亮ちゃん、ホントにありがとう… 
今こんなこと言うのはなんだけど… 私が心から愛したのは亮ちゃんだけだったよ。 

じゃあ、行くね。」 

こうして、綾香はこの街から消えた。 

亮輔は切れた電話を額に押し当て、綾香の無事を祈った。 

だが、そんな余韻に浸る間も無く… 亮輔の携帯が再び鳴り出した。 

多村からだった。 

亮輔は異常な緊張感に包まれたが、それを感づかれないよう、敢えてゆっくり電話に出た。 

「はい、もしもし…」 

「おい!綾香がそっちに行ってないか!?」 

「いえ…来てないですけど… どうかされたんですか?」 

「アイツ、逃げやがったんだよ!」 

多村の凄まじい怒りが電話の向こうから、亮輔の耳にガンガン伝わってきた。 

「逃げたって… いなくなったんですか!?」 

「ああ。今さっきな… 

今度という今度は絶対に許さねえ。 

とにかく今からそっちに帰る。」 

それだけ言うと、電話が切れた。 

亮輔は背筋が凍るような思いで、その場に立ち尽くしていたが‥

「そうだ…」 

亮輔は、慌てて綾香に着せられていた黒のキャミソールを丸めて袋に入れ、外に捨てに行った。 
証拠になるようなものは全て処分しておかないと、後で大変な事になるからだ。
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