ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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撹乱

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夜になって、マンションのエントランスに綾香が現れた。 

見張りの男二人は、予想外の展開に慌てて車から降りてきた。 

「すいません、どこに行かれるのですか?」 

「コンビニよ。」 

綾香は不機嫌そうに言って、歩き出した。 

「多村組長からキツく言われておりますので、同行させていただきます。」 

二人のうち一人がピタリと綾香の後ろに付き、もう一人はマンション前に停めている車の中に戻っていった。 

「仕事とはいえ、あなた達も大変ね。」 

綾香は視線を後ろに向け笑った。 

「綾香さん、あなたがあの時、組長を裏切らなければこんなことにならなかったのですよ。 
早く組長の信用を取り戻せるよう頑張って下さい。」 

「ふん… 大きなお世話よ。

さあ着いたわよ。買い物するときくらい少し離れてて。」 

綾香がコンビニの中に入ると、男も少し離れて中に入っていった。 

綾香はすました表情で買い物をして、レジにカゴを置いた。 

男は真後ろで注意深く観察していたが、特段変わったところはなく、またコンビニを出た綾香の後ろをピタリとついて行った。 

二人は無言で歩いていたが、綾香が何かを思い出したように振り返った。 

「はい、これ。」 

綾香は二つ持っていた袋のうち、一つを男に差し出した。 

「?」 

「お腹空いてるでしょ?二人でこれを食べて。 
私だって少しは罪悪感あるんだから。 
大の大人二人が、私みたいな小娘の監視に駆り出されてることに対してね。」 

男は綾香の意外な行動に戸惑いながらも、礼を言って袋を受け取った。 

次の瞬間、何故か、男はその場に倒れ込んだ。 

綾香がスタンガンを持っていたからだ。 

「ごめんね。」 

綾香はすぐさま、通りに待たせていたタクシーに乗り込み、その場から消え去ってしまった。 

あっという間の出来事だった。 

タクシーの中で綾香は、いや、亮輔は本物の綾香が無事に逃げられたかを心配しながら、祈るような表情を浮かべた
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