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心象
しおりを挟む二人共、仰向けにベッドに寝転び、天井を見つめていた。
「亮輔… 強引にしちまってスマン…」
晃は天井を見つめたまま小さな声で呟いた。
「いや… 実はさ、お前らと喋ってるときは
自分のことを『俺』って言ってるけど… 普段は『私』って言ってるんだ…
もう体と心の半分以上を『女』が占めてるんだ。
なんだかんだ言っても、晃に抱かれることを女の部分が望んでいたってことだよ…」
亮輔もまた天井に視線を向けたまま言った。
「亮輔、中学のときのお前はケンカも強くて、女にもモテて、一緒にはつるんでたけど、俺はちょっと嫉妬してたんだ。」
「嫉妬?」
「ああ。だから、お前がいなくなったときは、寂しい思いもしたが、内心ホッとした部分もあった。」
「…」
「今回お前が女になって帰ってきて… 俺の抱いていた感情がなんだったかに気づいたんだ。
俺はずっとお前に憧れていたんだって。」
「晃…」
「憧れてた男が女になって… 俺は、そんなお前を無性に抱きしめたくなったんだ。
自分でも何を言ってるのかわかんねえけど…」
「晃… なんとなく言いたいことはわかるよ。
さあ、香織が心配してるぞ! 帰ろう。」
亮輔はむくっと起き上がって微笑んだ。
「ああ。香織のやつ、お前と一緒だから、まさかこんなことしているとは思ってないだろうなあ。」
晃も亮輔を見つめて笑った。
寄り道をしたが、ようやく晃は亮輔を家まで送り届けて去っていった。
亮輔は自分の部屋に戻り
洗面台で化粧を落として顔を洗った。
そして
鏡の中の自分を見つめて
しばらくその場を動こうとしなかった。
また
涙がぽろぽろとこぼれ落ちてきた。
これは何の涙?
悲しいから?
亮輔は自分がなんで泣いてるのかわからず
戸惑いの表情を浮かべた。
ただ
一つ言えることは
日々
肉体と共に精神的にも女性化が進み
男性だったときの心象が徐々に薄れている…
ということだった。
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