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光陰
しおりを挟む「亮輔ー!」
自分の名前を呼ばれていることに気づいて
ハッとなった。
昼間に帰ってきて部屋でゴロゴロしてる間に
寝てしまっていたのだ。
時計を見ると、夜7時を回っている。
まだ少し寝ぼけてボーっとしていると、再び
「亮輔ー!」
と呼ぶ母の声が階下から聞こえてきた。
亮輔は体を起こし、髪の乱れを気にして手で直しながらゆっくりと下に降りていった。
「なに?」
階段の下で自分の名前を呼ぶ母に尋ねると、玄関の方を指差して言った。
「お友達が来てるよ。瀬尾君…」
「げっ! 香織のヤツ、やっぱり言いやがったか…」
亮輔は頭を抱えたが、隠れようもなく‥
玄関に立つ晃が既に自分の姿を見つめている。
「亮輔…?」
「おう、久しぶりだな… アキラ…」
観念した亮輔は片手を上げて応えた。
「驚いたぜ… 香織の話は本当だったのか…」
五年ぶりに見る晃は、すっかり大人の男に成長しており、金髪頭とがっちりした肉体が誇らしげに見えた。
「亮輔… やっぱり亮輔なんだよな?」
「ああ。二中でオマエと悪さしまくってた松山亮輔だよ…俺は。」
亮輔は自嘲気味に言って笑った。
「亮輔、そんなところで立ち話もなんだから… 上がってもらいなさいよ。
瀬尾君、どうぞ上がって下さい。」
美沙子が後ろから声をかけると、晃は恐縮して頭を下げた。
「いえ、亮輔君と遊ぶ約束をしてまして、車で迎えに来たんですよ。」
亮輔は、適当な話をする晃を睨んだが、結局
晃の術中はまり、うまく外に連れ出されてしまった。
燃費と趣味の悪い赤のスポーツタイプの車の助手席に亮輔を乗せると、晃は勢いよく発進させた。
「マジで信じられねー… まるっきりの女じゃねえか。
顔も声も体も‥
それも、めっちゃいい女だし… 」
晃は車を運転しているにもかかわらず、チラチラと亮輔を見ながら感嘆の声を上げた。
「香織から聞いてんだろ? 好きで女になったんじゃねーけど、まあ仕方ねーよ。」
「気の毒だったな。その辺の話は俺の家でゆっくり聞くわ。」
この町の人間は、結構あっさり変身した自分を受け入れるよなあ…
亮輔はそんな事を思いながら車窓からの景色を眺めていた。
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