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父
しおりを挟む「ところでさあ、俺がニューハーフになって帰って来たのに、母ちゃん全然驚かねえんだな。」
亮輔は久しぶりに出された母の手料理を食べ終え、尋ねた。
「そうね。あんたには散々驚かされてきたからね、これぐらいでは母さん、全然大丈夫だよ。」
そう言って美沙子は笑った。
「そうか… ちょっと安心した。
思い切って帰って来てよかったよ。」
「亮輔、お前、これを機にちょくちょく帰って来るんだろ?」
「いや…」
「お前が、あの人の事を認められなくて
高校も進学せずに家を出て行ったことは、母さんも充分にわかってるよ。
でもね…」
「その話はいいよ… じゃあ、そろそろ行くわ。」
亮輔はバッグを持ち、立ち上がった。
「何言ってるのよ… 泊まっていきなさいよ。」
「いや… もう帰って来る時間だろ?
今日は駅前のホテルにでも泊まるよ。
悪いけど、明日の墓参りだけまた付き合ってくれっかな?」
亮輔がそう言って、玄関に向かって歩き出した瞬間、前方で物音がした。
そして
「ただいま」
と、野太い声が聞こえてきた。
亮輔はここを出るタイミングが少し遅れてしまったことを後悔しながら立ち止まった。
「なんだ… お客さんか…」
亮輔の眼前に現れた男は、少し驚いたような表情で美沙子に言った。
「お帰りなさい。
お客さんじゃないわよ…
この子は亮輔よ。」
美沙子は少し言いにくそうに、亮輔の後ろから前に向かって声をかけた。
「はっ?」
男は全く理解出来ていない様子で、亮輔に視線を送った。
「… ご無沙汰してます…」
亮輔は視線を下に外してボソボソっと言って頭を下げた。
「…」
美沙子はもう一度説明をしなければならなくなった。
「この子は、あの亮輔なのよ。
なんでかはよく知らないけど、ニューハーフになって今日久しぶりに帰ってきたのよ。」
「り、亮輔… 君は亮輔君なのか!?」
「はい。」
亮輔は美沙子と男の間に立ち、ばつの悪そうな顔で頷いた。
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