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未知の世界
しおりを挟む「ここがお前の新しい職場だ。一生懸命頑張るんだぞ。」
槇村は自らが経営するニューハーフヘルス「AS」の前で立ち止まると、亮輔の肩に手を置きながニヤニヤと笑った。
「…はい。」
亮輔は力無く返事して愛想笑いを浮かべた。
店は雑居ビルの二階にあり槇村と亮輔は受け付けを通りヘルス嬢が待機する控え室に入った。
部屋の中には4人いてそれぞれがタバコを吸ったり携帯をいじったりして時間をつぶしていた。
「なんだ、今日は全然ヒマそうじゃないか。」
槇村は腕組みして忽ち不機嫌になった。
「もう少ししたら忙しくなるわよ。
ん? 社長、後ろにいる子は?」
四人の中で一番年を取っていそうなニューハーフが吸っていたタバコの先端を亮輔に向けて言った。
「ああ、そうだった。みんな、新しい仲間を紹介しよう。
名前は… そうだなあ、有紀でどうだ?
よし、有紀で行こう。」
「ふーん… めっちゃ可愛いじゃない。それって整形?」
年増ニューハーフが聞くと、亮輔は顔を少し赤くして静かに頷いた。
「おい、おまえら。よく聞けよ。この有紀ちゃんはな、泣く子もだまる多村組の現役バリバリのヤクザなんだよ。」
槇村がその話をすると、無関心に携帯をいじっていた者も顔を上げ、一斉に亮輔に視線を浴びせた。
「ちょっと待って。
なんでヤクザさんがニューハーフなのよ!?」
年増ニューハーフも驚きの表情を浮かべて槇村に言った。
「いや、俺も詳しくは知らんのだが、この有紀ちゃんはすごく大きなミスをしでかしたらしくてな、多村組長の逆鱗に触れてタマを抜かれちゃって、みんなの仲間入りをしたってわけさ。
それと多額の借金を抱えててな。完済するまでウチで預かることになったんだよ。」
「ふーん… 可哀想な子ね。
でも、気に入ったわ。有紀ちゃん、なんか困ったことがあったらアタシに相談するのよ。
面倒見てあげるから。
それとアタシの名前はヒロミ。
よろしくね」
年増ニューハーフはやさしげな表情を浮かべて亮輔に言った。
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
地獄に放り込まれた亮輔はこのちょっとした優しさがすごく嬉しかった。
しかし…
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