ニューハーフ学園

D判定

「君塚校長、全然話が見えないんですが、ちゃんと説明していただけますか。」


田中は少しイラつきながら君塚に質問した。


「田中先生。

この学校は、我が国初の文科省と法務省による共同管轄なんですよ。」


「どういう事です？
高校は全て文科省の管轄でしょう？」


「性同一性障害の生徒については、勿論文科省の管理下なわけですが、それとは別にここは単なる学校ではなく、更生施設の役割もしておりましてね。

少年犯罪を行い、少年院送致をされた中から、向こうで更生が難しいとされた者がこちらに送られてくるんです。」


「えっ…
少年院で匙を投げられたって言ったら、相当悪いって事じゃないですか。

そんな人間を、ごく普通の高校で受け入れるなんて馬鹿げてませんか。」


「田中先生、すいません。
言葉を間違えてしまいました。

ここは更生施設ではなく、処理施設です。」


「処理施設？」


「ええ。
とんでもないワルだけがここに送られてくるんです。
彼らはどう足掻いても更生する事なんて出来ないどうしようもない人間です。
当校では、社会復帰させることを念頭に置かず、社会に出ても二度と悪いことが出来ないようにしてしまうのが目的で受け入れるんです。」


「それって廃人にでもしてしまうってこと？」


「まあ、簡単に言えばそういう事です。

ずっと昔からタブーにされたロボトミー手術の現代版を行おうとしています。

その第一号が、まさに今日、護送車でここに連れられてきたんです。」


「そんな…人権の観点からも許されるわけがない。」


「田中先生、あなたも政権与党にいるんでしょう？

そんな素人のような事を言ってたらダメですよ。
この世には必ず表と裏、本音とタテマエってものがあるんです。

普段目にするのは表であり、タテマエの部分のみ。
そんなものだけでは社会は成り立ちません。」


「行政も司法も、全てが認めているという事ですか？」


「勿論です。

さあ、次に行きましょう。」


君塚はそう言うと、奥の施設に田中を案内した。