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交差する思い
末路
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親父さんの会社が倒産し、友梨奈が運転資金として貸していた三千万は、もうほぼ戻ってこない。
多少の資産はあるだろうから、それを売却して弁済資金に充てるというが、そもそも会社自体が前から危なかったのだから、自宅は銀行の抵当に入っているだろうし、売却出来るものは、これまでに全てしたはずだ。
たとえ、この先お金が返ってくる事になっても、その額は微々たるもので、そのほとんどは戻ってこないと考えるのが妥当だ。
友梨奈は気丈に俺に言ってたけど、三千万はデカすぎる。
とりあえず、俺の安月給で頑張ってくれてはいるけど、彼女は俺と結婚してから、全然贅沢もしないし、身の丈にあった生活をしてくれている。
これから、さらに頑張らないとな。
そう、俺は心に誓った。
一方、同じ時期に父の会社が倒産した事を聞いた蒼は、心配になり父に電話をかけたが、既に電話は使えなくなっていた。
友梨奈や愁とは違い、蒼にとって、父はかけがえのない唯一無二の存在で、一時期は仲も悪かったが、今は互いにネガティブな感情は持ち合わせていない。
「蒼ちゃん、どうしたの?
浮かない顔の蒼を見て、高橋は心配そうに声をかけた。
「ごめんね、せっかく食事に誘ってくれたのに。
実は父の会社が倒産したらしくて。」
「それは大変じゃん!
で、今はどうされてるの?
お父さんは」
「よくわかんないのよ。
父もずっと浮気してて、お母さんに愛想尽かされて離婚しちゃって。
挙げ句の果てに愛人の女に騙されてお金を持ち逃げされたらしくて…
バカな男だとは思うけど、ワタシの親には変わりないし、今は相談できる相手もいなくて
、一人で苦しんでると思うし…
ちょっと福山に戻ろうかなって、思ってるの。」
「うん。そうしてあげなよ。
困ってる時は、過去の事は置いといて、まずは助けてあげなきゃ。」
「うん。
でも、高橋さんてホントに優しいね。」
「えっ、そんな事は…」
「ううん。
優しいよ。今、側にいてくれて本当にありがたいし…
もし、ワタシ一人だったら、もっと悩んで、どうしようって思ってたはずよ。」
「蒼ちゃんの事が好きだから、心配しているだけだよ。」
「それが嬉しいの。」
「あ、そうだ。
福山に行く時、僕も一緒に行ってもいいかな。
もちろん、お父さんのところには、顔を出さないようにして、近くで待ってるから」
「えーっ、そんなの悪いわ。
ワタシの実家の問題なのに。」
蒼は恐縮し、固辞したが、高橋は聞かず。
最後は蒼の方が根負けした。
多少の資産はあるだろうから、それを売却して弁済資金に充てるというが、そもそも会社自体が前から危なかったのだから、自宅は銀行の抵当に入っているだろうし、売却出来るものは、これまでに全てしたはずだ。
たとえ、この先お金が返ってくる事になっても、その額は微々たるもので、そのほとんどは戻ってこないと考えるのが妥当だ。
友梨奈は気丈に俺に言ってたけど、三千万はデカすぎる。
とりあえず、俺の安月給で頑張ってくれてはいるけど、彼女は俺と結婚してから、全然贅沢もしないし、身の丈にあった生活をしてくれている。
これから、さらに頑張らないとな。
そう、俺は心に誓った。
一方、同じ時期に父の会社が倒産した事を聞いた蒼は、心配になり父に電話をかけたが、既に電話は使えなくなっていた。
友梨奈や愁とは違い、蒼にとって、父はかけがえのない唯一無二の存在で、一時期は仲も悪かったが、今は互いにネガティブな感情は持ち合わせていない。
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実は父の会社が倒産したらしくて。」
「それは大変じゃん!
で、今はどうされてるの?
お父さんは」
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「うん。そうしてあげなよ。
困ってる時は、過去の事は置いといて、まずは助けてあげなきゃ。」
「うん。
でも、高橋さんてホントに優しいね。」
「えっ、そんな事は…」
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「えーっ、そんなの悪いわ。
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最後は蒼の方が根負けした。
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