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フロイライン

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交差する思い

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「へえ、中学の親友同士が偶然に再会ってか。

人生というか、運命ってのはわからんもんだな。」


土井は、荒木翔太とユウの再会を期せずして演出してしまった事に驚きながら、呟くように言った。


「ええ…
本当に…」

ユウはいつもとは勝手が違う状況に戸惑いながらも、プロとして土井達の接客をこなした。


二時間ほど酒と会話を楽しんだ土井は、帰り際に翔太とユウを前に言った。


「久しぶりの再会の二人は連絡先知ってんの?」


二人とも首を横に振った。

「ほら、LINEの交換でもしとけよ。
なあ、荒木君」


「はあ…」


翔太は困ったような顔をして、ユウを見た。

ユウもまた、気まずそうな顔をしたが、言われるがままに携帯を用意した。


交換を済ませると、土井は満足そうな笑みを浮かべ

「よし、俺も安心したよ。」

と、言った。


ユウは、若気の至りで中学時代に付き合ったが、翔太もフツーの女性と付き合ってるだろうし、今さら昔の想いを引っ張り出してきてどうこうしようなんて、全く考えていなかった。

自分もまた、あの頃とは違い、強くなったという自覚も芽生えていたから…

土井に言われてLINEの交換をしてはみたが、翔太から連絡をしてこないかぎりは、自分からは絶対に連絡しない事を心に強く誓ったのだった。

それでも、仕事が終わると、真っ先に携帯を手にして、画面を凝視するユウの姿がそこにあった。


しかし、翔太からのメッセージは入っておらず、ユウは、少し笑みを浮かべた。

「そりゃそうよね…」

少しでも期待した自分が滑稽であった事を思い知ったのだった。



「お先でーす。」

ユウは、いつもより早く店を出て、真っ直ぐ家に帰ろうと思った。
勿論、ご飯も食べたくはない…


店の外は雨が降り出しており、ユウはバッグの中を覗き込み、折りたたみ傘を手に取った。


(タクシー捕まるかなあ)

恨めしそうに空を見上げ、傘を広げたユウは、大通りを目指して歩き始めた。


その時である


「ユウ…」


と、背後から声をかける者がいた。

ユウは、声の主が誰だかすぐにわかったが、ビクッとしてすぐに振り返った。


「えっ…」


やはり、そこに立っていたのは翔太だった。


「翔太、なんでいるの?」


「あれから社長と別れて、また戻ってきたんや。」


「ウソ…なんでよ」


「タクシー代ももろたけど、乗れへんかってん。」

と、言って笑う翔太は、昔の面影そのものだった。


「答えになってへんやないの。
なんで戻ってきたかって聞いてるのに。」

ユウが動揺しながら質問すると

「いや、わからへん」

と、翔太は恥ずかしそうに言った。
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