144 / 188
蒼一人立ち編
気になるアイツ
しおりを挟む
「蒼、また来たよ
マジメ君…」
ユウは一人で店にやってきた高橋という客を指差して言った。
「蒼ちゃんをご指名なんだけど」
マネージャーの井澤は、蒼に声をかけた。
「すぐ行きます」
レビューを終えた蒼は、休む間もなく高橋の元へ駆けつけた。
「いらっしゃいませ
またいらしてくれたんですね。
嬉しい」
蒼は席に着くと、満面の笑みを浮かべて高橋にウイスキーの水割りを作り、差し出した。
高橋はペコリと頭を下げて、その水割りを受け取ると、一口飲んでコースターにグラスを置いた。
蒼も高橋に承諾を得て、同じ酒をいただいた。
愁と別れてから、蒼の酒量は確実に増えており、ユウなど、周りの人間は少し心配していたのだが…
高橋は蒼を指名した割にはあまり口数が多くなく、ニューハーフとしては物静かな蒼の方が会話をリードしなければならなかった。
「ところで、高橋さんておいくつなんですか」
蒼は会話を途切れさせてはいけまいと、年齢を聞くという安易な手段を選んだ。
「あ、僕ですか
えっと二十六です…」
「あ、ワタシより少しお兄さんなんだ」
蒼がそう言うと、高橋は顔を真っ赤にして頷き、俯き加減で手元の水割りを口にした。
「ユウちゃん、ユウちゃん」
化粧直しをしに来たユウに井澤が手招きした。
「どうしたの?マネージャー」
「今、蒼ちゃんが付いてるお客さんいるじゃん。
アレって大丈夫?」
「大丈夫?
って何が??」
「いや、ここのところずっと店に来てるじゃん。
ひょっとしてストーカーなんじゃないかって、ちょっとヤバい感じがしてるんだけど。」
「うーん、大丈夫じゃない?
先週初めて店に来たのよ、あの人。
その時は誰かに連れられて複数で来てたんだけど、翌日から一人で来るようになって、今日で三日目かな」
「えーっ、やっぱりストーカーじゃん。
俺が休み取ってる間にそんなことがあったとは…
ちょっと注意しとかなきゃならないな。」
「大丈夫じゃない?
多分蒼を見て一目惚れしたんだよ。
そういうパターン、今までも結構あったじゃない?」
「それはそうだけど…」
「蒼も色々あって、今は仕事に全てをぶつけたいと思ってるのよ。
いいじゃん、もしかして太客かもしれないし。」
「まあ、ウチはキャバとショーパブの中間にあるような店だから、そういう客も必要ではあるんだけど…」
井澤は蒼のテーブルの方に向けて視線を送った。
マジメ君…」
ユウは一人で店にやってきた高橋という客を指差して言った。
「蒼ちゃんをご指名なんだけど」
マネージャーの井澤は、蒼に声をかけた。
「すぐ行きます」
レビューを終えた蒼は、休む間もなく高橋の元へ駆けつけた。
「いらっしゃいませ
またいらしてくれたんですね。
嬉しい」
蒼は席に着くと、満面の笑みを浮かべて高橋にウイスキーの水割りを作り、差し出した。
高橋はペコリと頭を下げて、その水割りを受け取ると、一口飲んでコースターにグラスを置いた。
蒼も高橋に承諾を得て、同じ酒をいただいた。
愁と別れてから、蒼の酒量は確実に増えており、ユウなど、周りの人間は少し心配していたのだが…
高橋は蒼を指名した割にはあまり口数が多くなく、ニューハーフとしては物静かな蒼の方が会話をリードしなければならなかった。
「ところで、高橋さんておいくつなんですか」
蒼は会話を途切れさせてはいけまいと、年齢を聞くという安易な手段を選んだ。
「あ、僕ですか
えっと二十六です…」
「あ、ワタシより少しお兄さんなんだ」
蒼がそう言うと、高橋は顔を真っ赤にして頷き、俯き加減で手元の水割りを口にした。
「ユウちゃん、ユウちゃん」
化粧直しをしに来たユウに井澤が手招きした。
「どうしたの?マネージャー」
「今、蒼ちゃんが付いてるお客さんいるじゃん。
アレって大丈夫?」
「大丈夫?
って何が??」
「いや、ここのところずっと店に来てるじゃん。
ひょっとしてストーカーなんじゃないかって、ちょっとヤバい感じがしてるんだけど。」
「うーん、大丈夫じゃない?
先週初めて店に来たのよ、あの人。
その時は誰かに連れられて複数で来てたんだけど、翌日から一人で来るようになって、今日で三日目かな」
「えーっ、やっぱりストーカーじゃん。
俺が休み取ってる間にそんなことがあったとは…
ちょっと注意しとかなきゃならないな。」
「大丈夫じゃない?
多分蒼を見て一目惚れしたんだよ。
そういうパターン、今までも結構あったじゃない?」
「それはそうだけど…」
「蒼も色々あって、今は仕事に全てをぶつけたいと思ってるのよ。
いいじゃん、もしかして太客かもしれないし。」
「まあ、ウチはキャバとショーパブの中間にあるような店だから、そういう客も必要ではあるんだけど…」
井澤は蒼のテーブルの方に向けて視線を送った。
1
お気に入りに追加
35
あなたにおすすめの小説
NH大戦争
フロイライン
ファンタジー
呪詛を家業として代々暮らしてきた二階堂家。
その二十六代目にあたる高校二年生の零は、二階堂家始まって以来の落ちこぼれで、呪詛も出来なければ、代々身についているとされる霊能力すら皆無だった
そんな中、彼の周りで次々と事件が起きるのだが…
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる