oh my little love

揺り戻し

「友梨奈

離婚して分与を受けたお金って相当にあるの？」


「主には土地と家よ。

ウチって二軒あったでしょ？
あそこって別々に所有権があって、元々あった家の方は私の権利に移し替えたの。

それを元旦那に売却する形で現金化して、こっちに越してきたってわけ。」


「なるほど。」


「まあ、小さな個人経営の会社だし、その資金の捻出に、多分会社の金を使ったんじゃないかと思うのね。
その辺が大きな企業と違うところで、線引きが曖昧だから。

そこに愛人の裏切りで、忽ち運転資金が焦げつき、倒産の危機になっている

っていうのが本当のところじゃないかなあ。」


「そうか
だとしたら、会社

ヤバイね」


「まあ、ヤバイってもんじゃないと思うよ。」


友梨奈さんは平然とした面持ちでコーヒーを飲んだ。


「お母さん

まさかとは思うんだけど、お父さん、変な気を起こさないでしょうね。」

蒼は相変わらずの心配モードで、友梨奈に言った。


「蒼太、もしそうだとしても私たちには関係ない話よ。

言い方は悪いけど、こっちの知った事じゃないわ。」


「お母さん…

お父さんが本当に困ってるなら、少しでも用立ててあげた方がいいんじゃない？

家を売ったお金がいくらあるかは知らないけど…」


「今はもう他人なんだよ。
そこまでする必要はこれっぽっちもないわ。」


やはり友梨奈と蒼ではその立ち位置が違いすぎる。

夫婦なんてものは、所詮は他人と他人がくっついてただけのものってことか。

「まあ、そうは言っても死なれでもしたら後味悪くないですか？

いくらもう関係ないって言っても、自分が手を差し伸べなかったばかりにそんな事になれば、こっちだって一生負い目を感じて生きていかなければならない。」


俺が言うと


「まあ、それはそうだけど…」


友梨奈も少し軟化した。


「ねえ、お母さん

一度お父さんと会ってみようよ。
それで話をしてみて、助けてもいいって思えばお金を貸してあげればいいし、ムリだと思うなら、会社を清算するように言おうよ。」


「なんで、私がそこまでしなければならないのよ。

あのクソ愛人に屈辱を受けてから半年も経ってないのよ。
そこまで譲歩しなければならないっていうわけ？」


「俺は蒼の意見に賛成するよ。」


「もう、愁ちゃんまで…」

ニ対一になり、友梨奈は泣きそうな顔になったが、最終的にはこちらの意見をのんでくれた。


「でも、愁ちゃん

会ってもいいけど、私と愁ちゃんの関係をあっちに言うからね。」


「えっ、なんでよ？」


「あの男にも屈辱ってものを味合わせてやりたいのよ。」


うーん…

女は怖い