oh my little love

フロイライン

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片翼

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蒼が倒れてから一週間が経過した。

すっかり意識を取り戻した蒼だったが、心配していた記憶や言語に障害は出ず、俺も心底ホッとした。

しかし、左半身に麻痺が見られた。

しばらくしたらリハビリを開始するみたいだけど、完全に治る事はないらしい。



今日も俺は学校が終わると病院に直行した。



ようやく一般病棟に移ることが出来て、面会もしやすくなった。


「蒼」

病室に入り、ベッドに横たわる蒼に声をかけた。


「愁ちゃん…」

蒼は、麻痺があるため、少し喋りにくそうに俺の名前を呼んだ。


「山崎君、いつもごめんなさいね」


「いえ」

蒼のお母さんが俺に申し訳なさそうに言うので、俺は首を横に振った。

お母さんはそのままこっちに居続けて蒼を看病しているが、親父さんは一昨日、一旦福山に帰った。
仕事の事とか色々あるらしい。自営業だから、誰かに代わってやってもらうって事が出来ないらしい。

それと、お母さんには蒼と相談して、今日から蒼の部屋に寝泊まりしてもらうことにした。

ホテル代もバカにならないから。


「蒼、喉乾いてない?」


「うん、大丈夫

ありがとう」

蒼はお母さんの問いかけに笑みを浮かべて答えた。

ちゃんと意識が回復した後、蒼の両親は今までの無理解な対応を詫び、蒼の生き方を尊重して応援すると誓った。

それが蒼にはよほど嬉しかったらしく、こんな大病を患って体にハンデを背負う事になったにもかかわらず、いつも笑顔で幸せそうだ。

ずっとこの日が来るのを、諦めたと言いつつも夢に描いていたのだろう。

なんかその光景を見ていたら泣けてくる。


「山崎君、お腹空いてない?」


「いえ、大丈夫です。」


「ちょっと食堂でご飯食べてくるわ。

蒼をお願いしてもいいかしら?」


「はい、もちろん」


お母さんはそう言って席を外し、俺と蒼を二人きりにしてくれた。



「愁ちゃん…ごめんなさい

いっぱい迷惑かけちゃって」


「何言ってんだよ。
ホントに良かったよ、こんなに元気になって。

倒れたって連絡受けた時はビックリしたよ、息ができないくらいに」


「うん…ごめんね

でも、体も麻痺してるし、もうお仕事も続けられないな。

愁ちゃんとの同棲も出来なくなるね…」


「そんなのリハビリ頑張ればまた動くようになるさ。

先生からも説明受けただろ?
俺も思ってたより後遺症が無くてよかったって思ってんだから。


それに仕事の事は一旦忘れよう。

ご両親からも聞いてると思うけど、ここを退院したら福山に帰るんだ。
お母さんの目の届くところにいた方がいいよ。」


「愁ちゃんと離れ離れになるのかあ…」


蒼は天井を見て呟くように言った。

両親に自分の生き方を認めてもらえた代わりに、俺との同棲生活を解消しなければならない。

それは、俺にとっても耐え難いほど辛い事だった。
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