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愛憎
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午後一時を回った頃、蒼の両親が姿を現した。
父親の方は初見だったが、お母さんの方はなんとなく憶えていた。
「根本さんですか」
「はい」
「小学校のとき一緒のクラスで仲良くしてもらっていた山崎愁です。」
「愁君…
お母さんから連絡もらって…
色々してくれてありがとうございます」
お母さんは頭をさげた。
「それで、蒼太は…」
親父さんが心配そうに俺に聞いてきた。
短髪でガタイがよく、けっこう厳つい感じの人だけど、不安そうにしてて、なんか実際より小さく見えた。
「手術は終わりましたが、まだ意識は取り戻していないようです。
ICUに入ったままで…面会謝絶です。
ここで待ってるしかありません。」
「そうですか…
色々すみません。」
親父さんは元気なく俺に頭を下げ、お母さんの肩を持ち、ゆっくりと腰掛けた。
俺も一個空けて隣に座った。
「あの、蒼太はどういう状況で倒れたんでしょうか。」
親父さんは、現在の唯一の情報源である俺に質問してきた。
「働いているお店で激しい頭痛を訴えて倒れ、ここに救急車で搬送されたそうです。」
「お店…
蒼太は何の店で働いてたんですか?」
「…
ニューハーフのお店です」
「ニューハーフ…
やっぱりそんなもんに…」
親父さんの顔に心配の色から怒りに変わるのが見て取れた。
「今はそんなことより、蒼太の無事を祈りましょう」
お母さんの方はまだ柔軟な考えを持ってるようだ。
それにしても親父の方はこんな時でもキレてしまうとは、相当ニューハーフとかが嫌いなんだろう。
ユウさんがこの場にいなくてよかった。
いたら多分、この親父に詰め寄られてたかもしれない。
「愁君は、なんで蒼太と?」
お母さん、痛い質問をしてくる…
えっと、真実を言うべきか、ソフトに言うべきか
「あの、こっちの大学に進学して出てきたんですけど、たまたま再会して。
小学校のときすごく仲良くしてもらってたし…」
「そうなんですね。
色々お世話かけちゃってすみません。」
「いえ、そんなのは…」
「蒼太は今どんな風なんですか?」
「どんな?」
「外見上の事です。
女性のように?」
「あ、そうですね。
どこからどう見ても女性にしか見えません。」
「なんて馬鹿な事を
治って病院を出てきたら、女装なんてもんをやめさせないといけないな。」
親父は吐き捨てるように言った。
「いえ、もう男として生きるのはムリみたいですよ。
女性ホルモンしてて胸もあって、下は去勢してしまってるみたいなんで」
へんっ、言ってやったわ
「胸?去勢?
そんな事を…」
困ってやがる。
そんな話をしていると、俺たちのところに医者の先生がやってきた。
父親の方は初見だったが、お母さんの方はなんとなく憶えていた。
「根本さんですか」
「はい」
「小学校のとき一緒のクラスで仲良くしてもらっていた山崎愁です。」
「愁君…
お母さんから連絡もらって…
色々してくれてありがとうございます」
お母さんは頭をさげた。
「それで、蒼太は…」
親父さんが心配そうに俺に聞いてきた。
短髪でガタイがよく、けっこう厳つい感じの人だけど、不安そうにしてて、なんか実際より小さく見えた。
「手術は終わりましたが、まだ意識は取り戻していないようです。
ICUに入ったままで…面会謝絶です。
ここで待ってるしかありません。」
「そうですか…
色々すみません。」
親父さんは元気なく俺に頭を下げ、お母さんの肩を持ち、ゆっくりと腰掛けた。
俺も一個空けて隣に座った。
「あの、蒼太はどういう状況で倒れたんでしょうか。」
親父さんは、現在の唯一の情報源である俺に質問してきた。
「働いているお店で激しい頭痛を訴えて倒れ、ここに救急車で搬送されたそうです。」
「お店…
蒼太は何の店で働いてたんですか?」
「…
ニューハーフのお店です」
「ニューハーフ…
やっぱりそんなもんに…」
親父さんの顔に心配の色から怒りに変わるのが見て取れた。
「今はそんなことより、蒼太の無事を祈りましょう」
お母さんの方はまだ柔軟な考えを持ってるようだ。
それにしても親父の方はこんな時でもキレてしまうとは、相当ニューハーフとかが嫌いなんだろう。
ユウさんがこの場にいなくてよかった。
いたら多分、この親父に詰め寄られてたかもしれない。
「愁君は、なんで蒼太と?」
お母さん、痛い質問をしてくる…
えっと、真実を言うべきか、ソフトに言うべきか
「あの、こっちの大学に進学して出てきたんですけど、たまたま再会して。
小学校のときすごく仲良くしてもらってたし…」
「そうなんですね。
色々お世話かけちゃってすみません。」
「いえ、そんなのは…」
「蒼太は今どんな風なんですか?」
「どんな?」
「外見上の事です。
女性のように?」
「あ、そうですね。
どこからどう見ても女性にしか見えません。」
「なんて馬鹿な事を
治って病院を出てきたら、女装なんてもんをやめさせないといけないな。」
親父は吐き捨てるように言った。
「いえ、もう男として生きるのはムリみたいですよ。
女性ホルモンしてて胸もあって、下は去勢してしまってるみたいなんで」
へんっ、言ってやったわ
「胸?去勢?
そんな事を…」
困ってやがる。
そんな話をしていると、俺たちのところに医者の先生がやってきた。
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