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第二印象
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「もう一度だけ言うよ。
俺はこれまでの人生で一番仲の良かった無二の親友である根本蒼太と、東京で春に再会
蒼太は幼い時から自分の性に違和感を持ってて、女性として暮らすようになっていた。名前も蒼(あおい)として東京で働いてたんだ。
俺はそんな蒼に惹かれて交際を申し込んだ。
そしたらOKしてくれた
それだけの話だよ。
蒼とは大学出たら結婚するつもりだ。
今日は蒼を紹介したくてここに連れてきたんだ。
でも、別に蒼との交際を認めて欲しいとか、そういうつもりはさらさらない。
だって、認められなくても俺にとっては知った事ではないからね。
事後報告ってやつだよ。」
さすがに両親とも言葉もなく、ただ唖然として俺の話を聞いていた。
だが、父は
「蒼さん
この事は蒼さんのご両親はご存知なんですか?」
冷静な口調で聞いた。
「いえ…高校二年のときに折り合いがつかなくなり、家を出て以来一度も会っていません…父にも母にも…」
「そうですか…」
蒼は俯いたままで蚊の鳴くような声で語るのみだった。
もう、針のむしろ状態だろう
俺がまとめるしかない
「あのさあ、さっきも言ったけど、別に俺は蒼との結婚を認めてほしいって頼みに来たわけじゃない。
単に報告だよ、これは。
もし、あんたらが認めないって言うならそれはそれでかまわない。
俺も親子の縁を切らせてもらうだけだから。
それくらい真剣だし、何を言われてもこれだけは曲げられないから。」
言ってしまった
蒼は益々俯き加減が酷くなり、もう泣くな、こりゃ。
蒼を助けるつもりが火に油を注いでるよ…
そんな重々しい空気の中、親父が口を開いた
「愁、お前はそういう短絡的なところを直さないとダメだぞ。
社会に出て人と交渉したり説得したりするとき、お前のような言い方ではまとまるものもまとまらん。
父さんと母さんは、何も反対してるわけではないんだ。
驚きはしたがね。」
「えっ」
「蒼さんが素敵なお嬢さんていうことは、お前に言われるまでもなくよくわかるよ。
少なくともお前達より長く人生を生きてきているんだからな。
父さんが心配なのは、蒼さんじゃなくお前になんだよ。
偉そうな口を叩いているが、お前はまだ学生で、社会に出た事もない未熟者だ。
その点が蒼さんとの決定的な違いだ
結婚や家庭生活ってものはな、好きや嫌いで成り立つものではないんだよ。
気持ちも勿論大事だが、経済面も含めて本当に幸せに出来るのか、そういう事を真剣に考えて言ってるのか
それをお前に問いたいんだ。」
「もちろんだよ。
そりゃ言われた通り俺はまだ大学生だし、親に仕送りしてもらいながら生活してる青二才だと思う。
でも、ちゃんと卒業して少しでも良い会社に就職して蒼を幸せにする気持ちに嘘はない。
それだけは揺るがないよ。」
「わかった。
お前がそこまで言えるんだったら、父さんも母さんもお前達二人を応援するよ。なあ、母さん」
さっきから何も言わずに聞いていたオカンも深く頷き、蒼に視線を送った。
「蒼さん」
「はい」
母さんの言葉に、蒼はビクッとして顔を上げた。
「蒼さん、こんなワガママでどうしようもない息子ですけど、どうかよろしくお願いします。」
「えっ…」
「蒼さんの話を聞いてて、私、涙が出そうになりました。
一番愛情が必要なときに一人で生きてきたなんて、頭が下がります。
愁が幸せにするって言ってるんで信じてやって下さい。
それと、いつかご両親にお許しをもらえる事を祈っています。」
「ありがとうございます…」
両親の意外な言葉に、蒼は涙を流して何度も頭を下げた
俺はこれまでの人生で一番仲の良かった無二の親友である根本蒼太と、東京で春に再会
蒼太は幼い時から自分の性に違和感を持ってて、女性として暮らすようになっていた。名前も蒼(あおい)として東京で働いてたんだ。
俺はそんな蒼に惹かれて交際を申し込んだ。
そしたらOKしてくれた
それだけの話だよ。
蒼とは大学出たら結婚するつもりだ。
今日は蒼を紹介したくてここに連れてきたんだ。
でも、別に蒼との交際を認めて欲しいとか、そういうつもりはさらさらない。
だって、認められなくても俺にとっては知った事ではないからね。
事後報告ってやつだよ。」
さすがに両親とも言葉もなく、ただ唖然として俺の話を聞いていた。
だが、父は
「蒼さん
この事は蒼さんのご両親はご存知なんですか?」
冷静な口調で聞いた。
「いえ…高校二年のときに折り合いがつかなくなり、家を出て以来一度も会っていません…父にも母にも…」
「そうですか…」
蒼は俯いたままで蚊の鳴くような声で語るのみだった。
もう、針のむしろ状態だろう
俺がまとめるしかない
「あのさあ、さっきも言ったけど、別に俺は蒼との結婚を認めてほしいって頼みに来たわけじゃない。
単に報告だよ、これは。
もし、あんたらが認めないって言うならそれはそれでかまわない。
俺も親子の縁を切らせてもらうだけだから。
それくらい真剣だし、何を言われてもこれだけは曲げられないから。」
言ってしまった
蒼は益々俯き加減が酷くなり、もう泣くな、こりゃ。
蒼を助けるつもりが火に油を注いでるよ…
そんな重々しい空気の中、親父が口を開いた
「愁、お前はそういう短絡的なところを直さないとダメだぞ。
社会に出て人と交渉したり説得したりするとき、お前のような言い方ではまとまるものもまとまらん。
父さんと母さんは、何も反対してるわけではないんだ。
驚きはしたがね。」
「えっ」
「蒼さんが素敵なお嬢さんていうことは、お前に言われるまでもなくよくわかるよ。
少なくともお前達より長く人生を生きてきているんだからな。
父さんが心配なのは、蒼さんじゃなくお前になんだよ。
偉そうな口を叩いているが、お前はまだ学生で、社会に出た事もない未熟者だ。
その点が蒼さんとの決定的な違いだ
結婚や家庭生活ってものはな、好きや嫌いで成り立つものではないんだよ。
気持ちも勿論大事だが、経済面も含めて本当に幸せに出来るのか、そういう事を真剣に考えて言ってるのか
それをお前に問いたいんだ。」
「もちろんだよ。
そりゃ言われた通り俺はまだ大学生だし、親に仕送りしてもらいながら生活してる青二才だと思う。
でも、ちゃんと卒業して少しでも良い会社に就職して蒼を幸せにする気持ちに嘘はない。
それだけは揺るがないよ。」
「わかった。
お前がそこまで言えるんだったら、父さんも母さんもお前達二人を応援するよ。なあ、母さん」
さっきから何も言わずに聞いていたオカンも深く頷き、蒼に視線を送った。
「蒼さん」
「はい」
母さんの言葉に、蒼はビクッとして顔を上げた。
「蒼さん、こんなワガママでどうしようもない息子ですけど、どうかよろしくお願いします。」
「えっ…」
「蒼さんの話を聞いてて、私、涙が出そうになりました。
一番愛情が必要なときに一人で生きてきたなんて、頭が下がります。
愁が幸せにするって言ってるんで信じてやって下さい。
それと、いつかご両親にお許しをもらえる事を祈っています。」
「ありがとうございます…」
両親の意外な言葉に、蒼は涙を流して何度も頭を下げた
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