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環境
しおりを挟む「ヒマみたいだな。」
バイトで俺の後のシフトに入っている村田さんがカウンターに入ると、周りを見ながら言った。
「ずっとこんな感じっすよ。ここ潰れちゃうんじゃないっすかね。」
「オーナー店だからしんどいよな、マジな話
まあ、バイトが心配する事じゃないか。
さあ、上がってくれ!
今日もあの超美人の彼女とデートなんだろ?」
「何回も言いますけど、彼女じゃないですし、小学校時代の友達なんすよ。」
「恵まれてない俺にとっては、男女の友情なんて成立しないと確信してる。」
だから男女じゃないって。
「それじゃあ上がらせてもらいます。お先です。」
俺は嫉妬の目で見る村田さんから視線を外し、逃げるようにバックヤードに下がった。
やっぱり根本は美人なんだよなあ。
知らない人間は皆、羨望の眼差しで見てくる。
男だって事を除けば、根本はパーフェクトである。
いや、最近、俺はアイツが男だって事が大した問題ではないと思い始めてる。
別に付き合ってるわけでもないんだし、アレが付いてようがどうだろうが関係ない。
何を言いたいのか自分でもよくわからないけど…
そういうことで、今日もまた根本と待ち合わせしてる。
俺は足早に駅前の広場に向かった。
まだ時間はあったんだけど…
案の定、約束の二十分前に着いてしまった為
さすがに根本の姿はそこにはなかった。
俺はベンチに腰掛けスマホをいじって時間潰しをする事にした。
そのとき
「あっ、ザッキーだ」
と、いう声が前方からしてきた。
慌てて顔を上げてみると、同じ大学の女子二人が立っていた。
歳内亜美と吉野美香‥
イヤな奴に会っちまった。
「どうしたの? こんなとこ座って。
ストーカーでもやってんの?」
歳内がそう言うと吉野が手を叩いて爆笑した。
コイツら、いつもうるせーんだよなあ。
全然仲良くないし、俺ともそんなに会話した事ないんだけど、同じサークルってだけで。
ぺらぺらとくだらない事言って二人で大ウケして、苦手だわ。
「ツレと待ち合わせしてんだよ。」
俺は何故か赤面しながら言った。
女に免疫ないんだよなあ、情けない。
なんて事を思っていたら、うるさい女たちの後ろから根本が歩いてきた。
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