116 / 122
男女の壁
しおりを挟む
実際のところ、優里はもう限界を迎え、体力が続かなかった。
気力を振り絞れたのは、今投げ終わった二番に対する投球までで、打席に入ってきた強打者の敷島に通用する球は持ち合わせていなかった。
優里はマウンドから少し下がり、額の汗をハンカチで拭った。
そして、自軍のベンチ前を見たが、岸は投球練習をしておらず、最後まで自分が任されているという、村上のメッセージだと受け止めた。
空を見上げると、灼熱の太陽光線が降り注いでくる。
自分の体力を奪った主な原因はコレかと、恨めしそうな表情を浮かべると、ようやく、敷島には 対峙した。
大輔が立ち上がってツーアウトだということをフィールドに散っている選手たちに指で示すと、優里の方を向いて頷いた。
退路はもうない
自分を信じて投げる以外に道はないのだ。
優里はマウンド後ろにあったでロージンを手に取り、覚悟を決めた。
「そうなんですよね…
水谷さんは女子なんですよね。
体が女子なんですよ
もうとっくに限界を迎えてる。
あと、もう少しなんだけどなあ、このあと少しがまたキツい。」
スタンドで見ていた今津は、残念そうに呟いた。
「でも、後一人
気持ちは残ってるけど、体は完全にガス欠だなあ。
ここから目も覆いたくなるような展開になるのだけは勘弁してほしいけど。」
宮里もまた、優里に感情移入しつつも、この後起きる惨事を想像せずにはいられなかった。
高島大の大応援の声援と、咲聖の優里を励ます声援がぶつかり合い、炎天下の中、異常な雰囲気を醸し出した。
優里の敷島に対する初球は、ストレート。
それも外せという大輔のサインだった。
山東と敷島なら、どちらも怖いが、まだ敷島の方が抑えられる可能性がある。
ただ、初球を捨てるのはキツイ
カウントを悪くするのは…
だが、自分の力で局面を打開することは、もう出来ない。
サインに頷いた優里は、二塁ランナーを見て、そしてすぐさまモーションに入り、敷島に対して第一球を投じた。
「!!」
投げた瞬間、優里は驚いたような表情になった。
球威どころか、コントロールまで失ったボールは、スゥーッと真ん中高めに行ってしまったのだった。
勿論、強打者の敷島がこの好機を逃すわけがない。
強振したバットの真芯で捉えたその打球は、まさに会心の一撃と言っていいほど、恐ろしく飛んだ。
レフトは一歩も動けず。
ボールはポールを巻くようにして、レフトスタンド中段に消えていった。
優里の性別を超越した戦いは、ここに幕を閉じたのだった。
気力を振り絞れたのは、今投げ終わった二番に対する投球までで、打席に入ってきた強打者の敷島に通用する球は持ち合わせていなかった。
優里はマウンドから少し下がり、額の汗をハンカチで拭った。
そして、自軍のベンチ前を見たが、岸は投球練習をしておらず、最後まで自分が任されているという、村上のメッセージだと受け止めた。
空を見上げると、灼熱の太陽光線が降り注いでくる。
自分の体力を奪った主な原因はコレかと、恨めしそうな表情を浮かべると、ようやく、敷島には 対峙した。
大輔が立ち上がってツーアウトだということをフィールドに散っている選手たちに指で示すと、優里の方を向いて頷いた。
退路はもうない
自分を信じて投げる以外に道はないのだ。
優里はマウンド後ろにあったでロージンを手に取り、覚悟を決めた。
「そうなんですよね…
水谷さんは女子なんですよね。
体が女子なんですよ
もうとっくに限界を迎えてる。
あと、もう少しなんだけどなあ、このあと少しがまたキツい。」
スタンドで見ていた今津は、残念そうに呟いた。
「でも、後一人
気持ちは残ってるけど、体は完全にガス欠だなあ。
ここから目も覆いたくなるような展開になるのだけは勘弁してほしいけど。」
宮里もまた、優里に感情移入しつつも、この後起きる惨事を想像せずにはいられなかった。
高島大の大応援の声援と、咲聖の優里を励ます声援がぶつかり合い、炎天下の中、異常な雰囲気を醸し出した。
優里の敷島に対する初球は、ストレート。
それも外せという大輔のサインだった。
山東と敷島なら、どちらも怖いが、まだ敷島の方が抑えられる可能性がある。
ただ、初球を捨てるのはキツイ
カウントを悪くするのは…
だが、自分の力で局面を打開することは、もう出来ない。
サインに頷いた優里は、二塁ランナーを見て、そしてすぐさまモーションに入り、敷島に対して第一球を投じた。
「!!」
投げた瞬間、優里は驚いたような表情になった。
球威どころか、コントロールまで失ったボールは、スゥーッと真ん中高めに行ってしまったのだった。
勿論、強打者の敷島がこの好機を逃すわけがない。
強振したバットの真芯で捉えたその打球は、まさに会心の一撃と言っていいほど、恐ろしく飛んだ。
レフトは一歩も動けず。
ボールはポールを巻くようにして、レフトスタンド中段に消えていった。
優里の性別を超越した戦いは、ここに幕を閉じたのだった。
2
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
聖也と千尋の深い事情
フロイライン
BL
中学二年の奥田聖也と一条千尋はクラス替えで同じ組になる。
取り柄もなく凡庸な聖也と、イケメンで勉強もスポーツも出来て女子にモテモテの千尋という、まさに対照的な二人だったが、何故か気が合い、あっという間に仲良しになるが…

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる