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theory
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咲聖打線は、三、四番が突出していて、その次が相当落ちるが五番の田宮となる。
つまり、三番から五番さえ勝負を避ければ、先ずもってして点を失う事はない。
特にハイレベルな高島大附属のようなチームからすれば。
それだけのレベル差がありながらも、敷島は決して慢心する事なく、全力でのピッチングを続けていた。
それは山東とて同じ思いで…
しかし、この回を抑えれば、甲子園出場が決定する。
冷静でいろという方が酷である。
山東は、敷島と他のナインに向けて、指を三本出して大声を上げ、あと三つ、しっかり取っていこう!とポーズで示した。
あと、三つ
あと、アウト三つで甲子園
敷島ははやる気持ちを抑えるように深呼吸し、空を見上げた。
球審のプレイがかかり、九回表の咲聖最後の攻撃が始まった。
村上は、ベンチで腕組みしながら、ただ見つめていたが、もはや打てる手などは存在せず、優里と大輔に託す事しか出来なかった。
ネクストバッターズサークルで戦況を見つめる優里に視線を送りながら…
だが、そんな村上の耳に、鋭い金属音が飛び込んできた。
慌てて視線の方向を変える村上だったが、一瞬、何が起きているのか理解できなかった。
センターとライトがそれぞれ右中間に向かって走っている。
そのど真ん中に落ちる白球
一塁を蹴り、二塁に向かう田上
一番深いところだ!
田上は迷う事なく二塁も回って、三塁に向かっている。
返球された球は中継に返されただけで、三塁に余裕で滑り込んだ田上は、塁上で派手なガッツポーズを取った。
伏兵…
思いもしなかった者に打たれた衝撃
山東は暫し呆然としていた。
これが油断と言わず何と言えよう
田上は、前の打席でもタイミングが合い、三遊間にヒットを打ったではないか。
にもかかわらず、三番四番に意識が行き過ぎ、田上への警戒心が薄れてしまった…
誹りを受けて当然である。
山東はマウンドに行き、敷島に詫びた。
「すまん
俺のせいだ。完全に抜けてた。
アイツのタイミングが合ってることに。」
「いや、そんな事より、ここからどうする?
三、四番を歩かせたら、さっきと同じシチュエーションになるけど。」
敷島の問いかけに、山東はバッターボックス付近で素振りをする優里を見つめた。
だが、七回表とは違い、即答する事が出来なかった。
つまり、三番から五番さえ勝負を避ければ、先ずもってして点を失う事はない。
特にハイレベルな高島大附属のようなチームからすれば。
それだけのレベル差がありながらも、敷島は決して慢心する事なく、全力でのピッチングを続けていた。
それは山東とて同じ思いで…
しかし、この回を抑えれば、甲子園出場が決定する。
冷静でいろという方が酷である。
山東は、敷島と他のナインに向けて、指を三本出して大声を上げ、あと三つ、しっかり取っていこう!とポーズで示した。
あと、三つ
あと、アウト三つで甲子園
敷島ははやる気持ちを抑えるように深呼吸し、空を見上げた。
球審のプレイがかかり、九回表の咲聖最後の攻撃が始まった。
村上は、ベンチで腕組みしながら、ただ見つめていたが、もはや打てる手などは存在せず、優里と大輔に託す事しか出来なかった。
ネクストバッターズサークルで戦況を見つめる優里に視線を送りながら…
だが、そんな村上の耳に、鋭い金属音が飛び込んできた。
慌てて視線の方向を変える村上だったが、一瞬、何が起きているのか理解できなかった。
センターとライトがそれぞれ右中間に向かって走っている。
そのど真ん中に落ちる白球
一塁を蹴り、二塁に向かう田上
一番深いところだ!
田上は迷う事なく二塁も回って、三塁に向かっている。
返球された球は中継に返されただけで、三塁に余裕で滑り込んだ田上は、塁上で派手なガッツポーズを取った。
伏兵…
思いもしなかった者に打たれた衝撃
山東は暫し呆然としていた。
これが油断と言わず何と言えよう
田上は、前の打席でもタイミングが合い、三遊間にヒットを打ったではないか。
にもかかわらず、三番四番に意識が行き過ぎ、田上への警戒心が薄れてしまった…
誹りを受けて当然である。
山東はマウンドに行き、敷島に詫びた。
「すまん
俺のせいだ。完全に抜けてた。
アイツのタイミングが合ってることに。」
「いや、そんな事より、ここからどうする?
三、四番を歩かせたら、さっきと同じシチュエーションになるけど。」
敷島の問いかけに、山東はバッターボックス付近で素振りをする優里を見つめた。
だが、七回表とは違い、即答する事が出来なかった。
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