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反撃ムード
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八回の表
高島大附属に先制され、一気に追い込まれた感が出てきた咲聖ベンチは、下位打線の八番からとはいえ、何かしらの反撃をしたいと考えていた。
さすがの敷島も多少の疲れが出ているはずだ。
先制したことで、さらに調子を出すのか、気が緩んで甘いところに投げてしまうのか、その答えは全てこの回の攻撃で明らかになろうとしていた。
そして…
村上は、ベンチ奥で水分補給する優里に視線をやった。
相手の敷島でさえ、疲れが出てくる頃だ。
女性の体の優里は、既に限界を迎えているに違いない。
八回裏から、継投策に出るか、続投させるか
そこも非常に難しい選択が迫られていた。
大輔は、優里に近づき、彼女のコンディションがどうなのかを観察した。
やはり疲れている…
だが、気力だけは些かも衰えてはいない。
これをどう見るか…
「優里、大丈夫か?」
優里は、ペットボトルを口から離し、大輔の方を見つめると、少し笑みを浮かべて頷いた。
「うん。
一点取られちゃったけど、なんとか最後まで行けそう。」
「そうか。
でも、無理はすんなよ。
無理は…」
「まだ百球投げてないし。」
「いや、高島大相手だと、他の学校に投げるのとはワケが違う。
神経使いすぎて、疲労度も何倍にもなるよ。
それは、お前が一番よくわかってんだろ?」
大輔は、気持ちが前のめりになっている優里を抑えようとしたが、彼女の代わりに投げられる者などいない現実もよくわかっており、それ以上は何も言わなかった。
とりあえず、この回の攻撃を少しでも長く…と、思い、グランドに目を向けると、既にツーアウトになっており、三人目のバッターも追い込まれていた。
「ストライっ!
バッターアウトっ!」
審判の手が高らかに上がり、八回表の攻撃は、手も足も出ずに、僅かな時間で三者凡退となった。
敷島に疲れも気の緩みもなし…
付け入る隙もなし…
八回の裏の守備に散らばる自軍の選手を見つめながら、村上はこの日、初めて敗戦を覚悟した。
高島大附属に先制され、一気に追い込まれた感が出てきた咲聖ベンチは、下位打線の八番からとはいえ、何かしらの反撃をしたいと考えていた。
さすがの敷島も多少の疲れが出ているはずだ。
先制したことで、さらに調子を出すのか、気が緩んで甘いところに投げてしまうのか、その答えは全てこの回の攻撃で明らかになろうとしていた。
そして…
村上は、ベンチ奥で水分補給する優里に視線をやった。
相手の敷島でさえ、疲れが出てくる頃だ。
女性の体の優里は、既に限界を迎えているに違いない。
八回裏から、継投策に出るか、続投させるか
そこも非常に難しい選択が迫られていた。
大輔は、優里に近づき、彼女のコンディションがどうなのかを観察した。
やはり疲れている…
だが、気力だけは些かも衰えてはいない。
これをどう見るか…
「優里、大丈夫か?」
優里は、ペットボトルを口から離し、大輔の方を見つめると、少し笑みを浮かべて頷いた。
「うん。
一点取られちゃったけど、なんとか最後まで行けそう。」
「そうか。
でも、無理はすんなよ。
無理は…」
「まだ百球投げてないし。」
「いや、高島大相手だと、他の学校に投げるのとはワケが違う。
神経使いすぎて、疲労度も何倍にもなるよ。
それは、お前が一番よくわかってんだろ?」
大輔は、気持ちが前のめりになっている優里を抑えようとしたが、彼女の代わりに投げられる者などいない現実もよくわかっており、それ以上は何も言わなかった。
とりあえず、この回の攻撃を少しでも長く…と、思い、グランドに目を向けると、既にツーアウトになっており、三人目のバッターも追い込まれていた。
「ストライっ!
バッターアウトっ!」
審判の手が高らかに上がり、八回表の攻撃は、手も足も出ずに、僅かな時間で三者凡退となった。
敷島に疲れも気の緩みもなし…
付け入る隙もなし…
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