Two seam

フロイライン

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中軸

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山東の予言通り、一、二番が倒れ、敷島の打順となった。


ネクストバッターズサークルから敷島の打席を見つめる山東だったが、優里に疲労がある事はハッキリとわかった。


高島大附属は、咲聖に比べ、選手一人一人のレベルは数段上である。

しかし、エースの敷島と主砲の山東の実力が突出しており、この二人と比べると、他のメンバーはどうしても見劣りしてしまう。

しかも、敷島、山東コンビといえども、大輔と優里と比較すると、ほぼ互角か、ひょっとしたら負けている部分もあった。

つまり、この試合は、敷島、山東対大輔、優里の二対二の戦いであった。

この回、二死でランナーがいない状況ではあったが、敷島が出れば、咲聖バッテリーは間違いなく自分と勝負する…
山東には確信めいた自信があった。


高島大附属にとって、一番嫌なのは先ほど自分達が取ったような作戦を相手に取られることだった。

敷島が塁に出た場合、山東と勝負を避けるというのもまたセオリーであろう。
しかし、咲聖側は、高島大附属のメンバーを過大評価しており、塁を埋めた状況で五番との勝負はしないと予想していた。


そんな考えでいた山東の耳に、高い金属音が響いてきた。

敷島が三遊間を見事に破るクリーンヒットを打ったのだ。


やはり、相手のピッチャー、水谷優里は疲れている。

山東は素振りを二回して、ゆっくりとバッターボックスに向かった。



マウンドには大輔をはじめ、咲聖の内野陣と伝令が集まってきていた。


「山東と勝負するかしないかはお前らで決めろとの事。」

伝令の言葉に大輔はずっこけそうになった。

この場面で、無責任な事を伝令に言わせる村上の無神経さに呆れながら。


「どうする?優里」


「うん。
勝負するわ。」


「わかった。

でも、カウントが悪くなったら歩かせるからな。」


「うん。」


優里は素直に頷き、またそれぞれが守備位置に戻った。


山東は、自分と勝負するということが雰囲気でわかり、足元をバットで均しながら気合を入れた。


そして、構えに入ると、マウンド上の優里の姿が目に飛び込んできた。

少し肩で息をしているように感じる。

だが、目には闘志が窺える。

まさに本懐である…

高校生同士とは思えない駆け引きが、ピッチャーとバッター、そして、キャッチャーの間で繰り広げられていた。

初球は外角低めいっぱいのストレート

大輔はそうサインを出した。

優里は頷き、ファーストランナーの敷島を目で牽制すると、コンパクトなフォームから、小さな体をしならせて、大輔の要求通りのコースにストレートを投げ込んできた。
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