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沈黙
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「ストライッ!」
球審の手が上がり、咲聖の攻撃が終了した。
塁上にいた三人は明らかに落胆しながらベンチに戻ってきた。
まさか、ノーアウト満塁で一点も取れないとは…
村上は表情を変える事なくベンチで腕組みをし、守備につくナインを見つめていた。
これは、自分の作戦ミスなのか…
ノーアウト満塁で五、六、七番がスクイズも決められず、三者凡退に倒れるなんて、誰が予想できようか…
こういうときは、あっさりと失点してしまうものである。
この回を何とか優里に抑えさえすれば、九回にもう一度チャンスがあるはず。
優里と大輔のバッテリーに縋るより他なかった。
対する高島大附属の敷島と山東は、見事に後続を抑え、満足げに言葉を交わしながらベンチに帰ってきた。
「山東、まさかのノーアウトでの満塁策
正直ビビったぜ。」
「悪かったな。
あくまでもカンなんだよ、カン
水谷は勝負したら絶対に打たれる空気を出してたし、富田だってそうだった。
これは勝負しない方がいいって、瞬間的に思っちまったんだよ。
逆に5番から先はバントすら成功しねえ感じがひしひしと伝わってきたし、まあこっちの思惑通りになったってわけさ。」
山東の冴え渡るカンに、驚く敷島だったが、ベンチに戻ると、監督の鶴田富雄が半ば呆れた顔で
「おい、お前らに任せてるからって
いい加減にしてくれよ。
寿命が縮む思いだったぞ」
と、言った。
「監督、すいませんでした。」
山東は頭を下げた。
「いや、お前のそのカンというか、予知みたいなもんは、ウチの大きな武器だ。
この回に必ず点を取って、あと2イニングをきっちり抑えよう。」
「はいっ!」
大輔は少しばかり不安を感じていた。
七回表にノーアウト満塁のチャンスをものにする事が出来ず、無得点に終わった。
優里は平然としているが、内心ではかなり落胆しているはずだ。
疲労と相俟って、この回のピッチングに影響を及ばさないだろうか…
大輔の不安をよそに、優里はこの回の先頭打者である徳永に対し、キレのあるストレートを投げ込み、ストライクから入った。
「打てる…」
山東は呟いた。
水分補給をして、ヘルメットを被ろうとしていた敷島は、思わず振り向いて、山東の方を見つめた、
「山東、どうした?」
「敷島
水谷の球、だいぶキレが悪くなってる」
「そうか?
俺にはそうは見えねえけど」
「次は打てそうだ…
とは言っても、一、二番は抑えられるだろう。
敷島、何が何でも 塁に出てくれ。」
「わかった。」
敷島は、短く答えて準備を始めた。
球審の手が上がり、咲聖の攻撃が終了した。
塁上にいた三人は明らかに落胆しながらベンチに戻ってきた。
まさか、ノーアウト満塁で一点も取れないとは…
村上は表情を変える事なくベンチで腕組みをし、守備につくナインを見つめていた。
これは、自分の作戦ミスなのか…
ノーアウト満塁で五、六、七番がスクイズも決められず、三者凡退に倒れるなんて、誰が予想できようか…
こういうときは、あっさりと失点してしまうものである。
この回を何とか優里に抑えさえすれば、九回にもう一度チャンスがあるはず。
優里と大輔のバッテリーに縋るより他なかった。
対する高島大附属の敷島と山東は、見事に後続を抑え、満足げに言葉を交わしながらベンチに帰ってきた。
「山東、まさかのノーアウトでの満塁策
正直ビビったぜ。」
「悪かったな。
あくまでもカンなんだよ、カン
水谷は勝負したら絶対に打たれる空気を出してたし、富田だってそうだった。
これは勝負しない方がいいって、瞬間的に思っちまったんだよ。
逆に5番から先はバントすら成功しねえ感じがひしひしと伝わってきたし、まあこっちの思惑通りになったってわけさ。」
山東の冴え渡るカンに、驚く敷島だったが、ベンチに戻ると、監督の鶴田富雄が半ば呆れた顔で
「おい、お前らに任せてるからって
いい加減にしてくれよ。
寿命が縮む思いだったぞ」
と、言った。
「監督、すいませんでした。」
山東は頭を下げた。
「いや、お前のそのカンというか、予知みたいなもんは、ウチの大きな武器だ。
この回に必ず点を取って、あと2イニングをきっちり抑えよう。」
「はいっ!」
大輔は少しばかり不安を感じていた。
七回表にノーアウト満塁のチャンスをものにする事が出来ず、無得点に終わった。
優里は平然としているが、内心ではかなり落胆しているはずだ。
疲労と相俟って、この回のピッチングに影響を及ばさないだろうか…
大輔の不安をよそに、優里はこの回の先頭打者である徳永に対し、キレのあるストレートを投げ込み、ストライクから入った。
「打てる…」
山東は呟いた。
水分補給をして、ヘルメットを被ろうとしていた敷島は、思わず振り向いて、山東の方を見つめた、
「山東、どうした?」
「敷島
水谷の球、だいぶキレが悪くなってる」
「そうか?
俺にはそうは見えねえけど」
「次は打てそうだ…
とは言っても、一、二番は抑えられるだろう。
敷島、何が何でも 塁に出てくれ。」
「わかった。」
敷島は、短く答えて準備を始めた。
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