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フロイライン

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四番勝負

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ノーアウトランナー一塁二塁
そしてバッターは四番の大輔。

否が応でも気合いが入る打席だ。

大輔はサインの確認を行なった。

ベンチからの指示はない。

つまり、自由に打てというサインだ。

大輔は意を決した。

ここで打ち、自分で決めると。

そう、自分に求められているのは進塁打でない
確実に返す! 
それが四番の仕事だ。

大輔は最大限に集中力を高めると、ゆっくりと足の位置を確かめ、そして敷島に対峙するように構えた。

マウンド上の敷島は、この緊迫した場面でも余裕が見られ、少し笑っているような気がした。

大輔はそれを気にすることなく、初球を待った。


敷島は二塁ランナーを目で牽制しつつ、大輔に向け、第一球を投じた。

大輔は初球はストレートで外角を突いてくると予測していたが、球の軌道、スピードはまさに読み通りだった。


しかし


大輔はバットを止めた。


球審の手は上がらず、初球はボールとなった。

ボール二個分ほど外に外れていたのだ。


次の球は…

変化球でも簡単にカウントを稼げる敷島は、二球目はカーブで来ると大輔は踏んでいた。

敷島はキャッチャーの山東のサインに頷き、二球目のセットに入った。

また目で二塁ランナーを制すると、素早いモーションで第二球を投じた。

(ストレート!)


大輔は内角に鋭く入るストレートに、スイングする事なく見送った。

しかし、またもや球審の手は上がらなかった。

今度はボール一個分内に外れていたのだ。

もし、ストレート待ちだったら絶対に手を出していたくらい、際どい球だった。


大輔はボックスを出て二度ほどスイングをして、また戻った。

次こそストライクを取りにくる!

ボールスリーになると、向こうは絶体絶命のピンチとなり、いよいよ追い詰められる。
そうなる前に相手は…

大輔はここでカーブでカウントを取りにくると読んだ。

もう、間違いない。



ベンチの村上も同じ考えだった。

ストレートなら仕方ないが、変化球なら大輔は必ず捉える!

無表情で見つめるその姿は、ベンチで唯一冷静な人間だと周囲から見られていたが、その実は手に汗を握りしめ、異常な興奮をしていたのだった。


敷島は表情ひとつ変えずに、同じ間合いから第三球を大輔に向かって投じた。

大輔と村上の予想が外れ、第三球もストレート
それも外角に大きく外れた。


(スリーボール…

敷島のヤツ、いくらキツイ場面だからってこんなにコントロールが悪かったか?)


大輔は若干頭が混乱したが、すぐに気を取り直し、次の球を待った


しかし…

四球目もストレート、しかも外角にまた大きく外れ、あっさりと大輔を歩かせてしまった。


ノーアウト満塁


高島大附属は、ここにきて絶体絶命のピンチを迎え、勝負の行方は五番で主将の田宮が握る事となった。
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