Two seam

フロイライン

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特異点

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長い髪の美少女、水谷優里がバッターボックスに入った。

いつもは可愛らしいという表現がぴったりの彼女だが、この打席では、並々ならぬ闘志がみなぎり、顔つきが全然違って見えた。

それはネクストで控える大輔にも感じ取れ、何か予感めいたものが頭をよぎったのだった。


(優里は打つ…)

と。


それは高島大附属のバッテリーも同じであった。


ピッチャーの敷島は勿論、捕手の山東も優里の構えを見て、何やらイヤな予感がした。

特に山東は、ここはまともに行ってはいけないという予感めいたものが、頭をよぎっていた。
それは、超高校級のスラッガーでもある自身の経験から来るカンのようなものだった。

山東は敷島に全球ボール球を要求した。

普段ならそんなサインが出たら、ブチ切れる敷島も、素直に指示に従った。

初球、際どい外角高めにボール
二球目、同じコースにボール
三球目、優里は、内角の速い球にのけ反るように避けてボール


ネクストバッターズサークルでその様子を見ていた大輔は、首を傾げた。


たしかにこの打席の優里は雰囲気がある。
まともに勝負せず、際どいボールを投げるのもセオリーではある。

しかし、ここで四球を出せば元も子もなくなる。

自惚れているわけではないが、次は四番の自分の打席で、咲聖打線では一番期待が持てる打者であるということは誰の目にも明らかだ。
自分の前にランナーを二人も出すのは、相手にとって自殺行為だ。

それとも、スリーボールからでも投球の組み立てが出来ると踏んでいるのか

優里も四球目からが勝負だと踏んでいた。
もう遊び球が使えない相手バッテリーより、コースと球種をある程度絞って目線を置ける分、こちらが有利に違いないと。

次の球が、この試合の帰趨を明らかにさせる!


気合いを入れて、それでいて冷静に構える優里に向かって、敷島は第四球を投じた。


「!!」

大輔は、敷島の球の出所を見て、驚きの表情を見せた。


外角にボール一個分外れ、優里は四球となり、バットを置いて一塁に向かった。


外れたのか、外したのか…

大輔は今のボール、いや、優里に投じられた全四球の意味について考えたが、相手バッテリーの意図を計り知る事が出来なかった。


しかし、チャンスには変わりない。

これは紛れもない事実である。


大輔はゆっくりと打席に入り、敷島と対峙した。

そこで、確信したのである。

優里はわざと歩かされたと…

敷島の表情がそう物語っていたのだ
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