Two seam

フロイライン

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拮抗

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優里は、下馬評通り、高島大附属のエース敷島との息詰まる投手戦に持ち込む事に成功した優里は、三回以降も付け入る隙を見せず、六回までパーフェクトピッチングを披露した。
敷島も二回に大輔にヒットを許した以外は完璧に抑え、優里と同じくその後のイニングを完璧に抑えた。

そして、自由を決するべく、最終の三イニングに突入した。


「動くとしたらこの回…

咲聖は二番、高島大は一番からの好打順」

中里はスコアボードを見つめながら呟くように言った。


「そうですね。
両投手とも球数は非常に少ないですが、強い相手への投球は球数に関係なく、終盤にドッと疲れが出てくるものです。
特に水谷さんは、体のハンデもありますから、敷島君より先にへばってくる可能性があります。」


今津も中里と同様、この回に動きがあると感じていた。


そして、バッターボックスに入った田上もまた、何か予感めいたものを感じていた。


自分が出るのか凡退するのかでこの試合の全てが決まるような気がする

と…


相手は疲れも見えず、球の勢いもまだ十分にある。


田上は自分を落ち着かせるようにホームベースをコンコンとバットで叩いて深呼吸し、ゆっくりと構えに入った。

18.44m先にいる高島大附属のエース敷島は、余裕のある表情で田上を見つめ、サインに頷くと初回から変わらぬ大きなフォームで初球を投じた。

(ストレート!)

田上は初球をストレートと踏んでいた。

ズバリ的中したのだ。

一、二、三のタイミングとよく言うが、敷島は球持ちが良く、そしてストレートも速い為、一、二のタイミングがちょうど良かった。

田上はそのタイミングを初回からずっと測っていたが、やはり間違いなかった。

鋭く、そして素早く振り抜かれた田上のバットは、敷島の速球を真芯で捉えた。

三遊間が一歩も動けず、そのちょうど真ん中を割り、レフト前に転がった。

田上は一塁を回ったところでストップし、レフトから内野に返った球を見ながら帰塁した。

ベンチに向かって手を挙げる田上に、咲聖ナインは大いに盛り上がった。

しかし、村上だけは無表情で足下を見ながら考えるような仕草をした。


(ここは水谷のバットを信じてそのまま打たせるか

それとも確実に送って、富田で勝負させるか…
いや、そうなったら歩かされるだけだ。

田宮に全てを託す?

どうすればいいっ!?)


村上は迷いの中、打席に入る優里を見た。

力が抜けて自然体でバットを構える優里を見て、村上の腹は決まった。


(打て!)


だった。
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