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フロイライン

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御前報告

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村上は西岡理事長のところに行き、翌日のメンバー、試合への作戦の報告を行った。


「ほう、マダックスとは、キミも思い切った事を言ったね。」


「はい。ですが、バックのメンバーが固くなっては元も子もありませんので、三人以外にはその事は伝えていません。」


「そうだね。変に意識させたら逆にエラーしてしまうかもしれんしな。

ところで、水谷さんはフツーに投げられそうかね?」


「その辺は何とも申し上げられません。
理事長に連れてきていただいたトレーナーのおかげで、予想以上に回復してはいますが…
やはり、元々男の体であったものを無理矢理女性の体に変化させているだけに、無意識のうちに無理をしてしまいがちです。
そこは大人がちゃんと見て、歯止めをかけてあげないと潰れてしまいます。」


「そうだね。
今や水谷さんは咲聖の、いや、日本の宝と言っても過言じゃないからな。

私は何としてでもこの咲聖を甲子園に出場させたいと、金を惜しまず投資してきたが、健気に頑張る水谷さんの姿を見て、少し考えが変わったよ。

彼女の才能と健康を守りつつ、次のステージに送り込む事が出来れば、私としても本望だってね。」


「はい。

富田は才能に恵まれ、努力を惜しまない奴ですから、もし甲子園が叶わなかったとしても、きっとプロのドラフトにかかるでしょう。

ですが、私が見るに、水谷の才能は富田をも凌駕しています。
本人の気持ち次第ですが、彼女がプロへ進めば、その特異な立ち位置とも相俟って、野球界に革命的な変化をもたらすでしょう。

だから、我々は彼らの力になる事はあっても、その芽を摘むような事をしてはいけないのです。」

村上は熱く語った。

「そうだね。

明日については結果を求めたりはしないでおこう。
一生懸命頑張り、ケガなく終わってくれればそれで十分だ。」

西岡も村上の言葉に同調したが、最後に気になっていた事を質問した。

「明日の相手の高島大附属の実力を、村上君はどう見ているかね?」


「はい。
昨日の興院も打線が素晴らしく、苦戦しましたが、投手の出来が今大会ずっとイマイチだった為に何とか勝つ事が出来ました。

しかし、高島大附属のエース敷島君は、ここまで予選を一人で投げ抜き、失点は準決勝のエラー絡みの一点だけです。
つまり、自責点0の完璧な投球をしているわけです。

彼のピッチングについては私もビデオで見ましたが、その才能は水谷にも匹敵すると思います。

また、打線も好調で一番から九番まで気を抜く事も出来ず、どこからでも点を取れる打線です。

つまり、投手力は互角
打力は圧倒的に負けている…

それが高島大附属に対する私の見解です。」


「なるほど
水谷さんに抑えてもらわないと勝ち目はないという事か」

西岡は目を瞑って、椅子の背もたれに後頭部を押し当てた。
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