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帰趨

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「ストライっ!」


内藤はぴくりとも動かず初球を見送り、審判はストライクのコールをした。



「速い!」

スタンドの今津は思わずそう口走り、中里の方を見た。

中里も興奮気味に頷き


「今の、155くらい出てんじゃないですか。

一年の時見た球より確実に速いし、キレは今の方が全然あります。」

と、答えた。


「いやあ、すごいね。
元々持ってるポテンシャルが違うって事だな。」

今津は、全国的に見ても屈指の選手である優里と大輔を、地区予選で間近に見れた幸運に心から感謝した。



そして


最後もとんでもない速さの球で空振りを取った優里は
両手を上げて全身で喜びを表した。


「ここで三球三振で締めるのかよ」


大輔は整列しながら優里に声をかけた。


「キツかったけどね」

優里は、大輔を見上げて笑って舌を出した。


10対9

乱打戦となった興院との準決勝を、優里の見事なリリーフで勝ち取った咲聖は、ついに決勝へと駒を進めた。

あと一つで甲子園

あと一つ勝てば悲願の甲子園出場が決まる。


だが、今度こそ優里は使えない。

出せばその緊張感から好投するかもしれない。

そへと同時に、取り返しのつかない故障に見舞われる危険性もある。

テレビ取材も複数あり、優里のその特殊な立場から、全国からも注目をされている。

ここで何かあれば、監督の村上は当然として、学校自体が悪者になってしまう。

学校の知名度、人気を得るために甲子園に出たいと考えているのに、その逆になってしまっては元も子もない。


村上は明後日の決勝も、先発を岸で行かせ、優里はバッターに専念…
そして、何があっても投げさせない事を心に誓ったのだった。


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