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緊張の均衡
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「歩かされますかね。」
光岡が独り言のように言うと、村上は頷いた。
「まあ、くさいとこ突いてきて、無理はせんだろうね。
ただ…」
「えっ?」
「富田クラスの選手を相手に中途半端な投球は命取りになる…
私なら、敬遠するね。」
大輔は考えていた。
相手はまともには勝負してこないだろう。
普通で考えれば、歩かされて満塁策…
続く田宮との勝負になるが、果たして田宮は打てるのか
冷静に見て田宮は自分、優里に次ぐ実力の持ち主である。
だが、今日は全打席凡退と相手にタイミングが合っていない。
満塁のプレッシャーがあったとしても向こうは田宮との対戦に自信を持っている。
やはりこちらが不利だ…
早めに追い込まれて相手に色気を出させるか…
だが、そうなると打てる球が来る確率は大幅に減る
(よし、これしかない。)
大輔は大きな構えで榮進のエース北城と対峙した。
捕手の奥田は初球を外角のボールゾーンに投げるように指示。
北城は頷き、サイン通りにストレートを投げ込んだ。
投げた瞬間にハッキリとわかるボール球
しかし、大輔はバットを出し、空振りした。
「富田君、だいぶ気負ってますねえ。」
初球の空振りを見て中里は少し天を仰ぎながら呟いた。
「いや、中里さん…
あれは撒き餌かもしれませんよ。」
今津は少し見を前に乗り出し中里に言った。
「撒き餌かあ…
でも、この場面ではリスキーすぎる」
「負けたら終わりですし、一番期待出来るバッターですから、何としても自分で決めたいという思いがあるんでしょう。」
北城の第二球は、奥田のサイン通り一球目と同じ外角のボール球。
大輔はまたもや空振りし、ツーナッシングと忽ち追い込まれてしまった。
この時点で奥田は大輔の作戦を看破した。
わざと追い込まれて自分と勝負させようとしている事を。
(だったら、こっちは絶対に勝負しない。)
奥田は三球目以降も全てストライクゾーンには投げないように、ベースの外でミットを構えると
これまでと同じように外角に外れる直球に、大輔は見逃し1-2
四球目はカーブを選択するもまたもや外れ、2-2
万が一カーブが甘く入った場合、打たれる可能性があるので、五球目は再びストレートを要求。
外に外れて3-2となった。
奥田の思い通りの投球だった。
もう一球外して、歩かせる
そして五番田宮との勝負に専念する
これで、自分達の勝利だ。
(…)
奥田はこのとき、一瞬、悪い予感がした。
(田宮を本当に抑えれるのか?
全部外角に放っている富田は完全に意識が外に行ってる。
ここで裏を欠いて内角にズバッと決めたら、手が出ないかもしれない。)
奥田の一瞬の気の迷い…
吉と出るか凶と出るか…
奥田は北城に内角のストレートを要求。
だが、必ずボール球を放ること。
北城もすぐに奥田の意図を理解し、頷き、セットに入った。
自動的に走り出すランナーを牽制しつつ、大輔に向かって内角にストレートを投げ込んだ。
球の勢いは十分にある
しかし!
奥田が想定していたものより、ボールが一個分中に入ってきた。
しかし、ボール球には変わりなかった。
空間を切り裂くような金属音
内角の球を上手く腕をたたみ込んで振り抜いた大輔の打球は低い弾道でピッチャー返しのライナーとなった。
光岡が独り言のように言うと、村上は頷いた。
「まあ、くさいとこ突いてきて、無理はせんだろうね。
ただ…」
「えっ?」
「富田クラスの選手を相手に中途半端な投球は命取りになる…
私なら、敬遠するね。」
大輔は考えていた。
相手はまともには勝負してこないだろう。
普通で考えれば、歩かされて満塁策…
続く田宮との勝負になるが、果たして田宮は打てるのか
冷静に見て田宮は自分、優里に次ぐ実力の持ち主である。
だが、今日は全打席凡退と相手にタイミングが合っていない。
満塁のプレッシャーがあったとしても向こうは田宮との対戦に自信を持っている。
やはりこちらが不利だ…
早めに追い込まれて相手に色気を出させるか…
だが、そうなると打てる球が来る確率は大幅に減る
(よし、これしかない。)
大輔は大きな構えで榮進のエース北城と対峙した。
捕手の奥田は初球を外角のボールゾーンに投げるように指示。
北城は頷き、サイン通りにストレートを投げ込んだ。
投げた瞬間にハッキリとわかるボール球
しかし、大輔はバットを出し、空振りした。
「富田君、だいぶ気負ってますねえ。」
初球の空振りを見て中里は少し天を仰ぎながら呟いた。
「いや、中里さん…
あれは撒き餌かもしれませんよ。」
今津は少し見を前に乗り出し中里に言った。
「撒き餌かあ…
でも、この場面ではリスキーすぎる」
「負けたら終わりですし、一番期待出来るバッターですから、何としても自分で決めたいという思いがあるんでしょう。」
北城の第二球は、奥田のサイン通り一球目と同じ外角のボール球。
大輔はまたもや空振りし、ツーナッシングと忽ち追い込まれてしまった。
この時点で奥田は大輔の作戦を看破した。
わざと追い込まれて自分と勝負させようとしている事を。
(だったら、こっちは絶対に勝負しない。)
奥田は三球目以降も全てストライクゾーンには投げないように、ベースの外でミットを構えると
これまでと同じように外角に外れる直球に、大輔は見逃し1-2
四球目はカーブを選択するもまたもや外れ、2-2
万が一カーブが甘く入った場合、打たれる可能性があるので、五球目は再びストレートを要求。
外に外れて3-2となった。
奥田の思い通りの投球だった。
もう一球外して、歩かせる
そして五番田宮との勝負に専念する
これで、自分達の勝利だ。
(…)
奥田はこのとき、一瞬、悪い予感がした。
(田宮を本当に抑えれるのか?
全部外角に放っている富田は完全に意識が外に行ってる。
ここで裏を欠いて内角にズバッと決めたら、手が出ないかもしれない。)
奥田の一瞬の気の迷い…
吉と出るか凶と出るか…
奥田は北城に内角のストレートを要求。
だが、必ずボール球を放ること。
北城もすぐに奥田の意図を理解し、頷き、セットに入った。
自動的に走り出すランナーを牽制しつつ、大輔に向かって内角にストレートを投げ込んだ。
球の勢いは十分にある
しかし!
奥田が想定していたものより、ボールが一個分中に入ってきた。
しかし、ボール球には変わりなかった。
空間を切り裂くような金属音
内角の球を上手く腕をたたみ込んで振り抜いた大輔の打球は低い弾道でピッチャー返しのライナーとなった。
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