Two seam

フロイライン

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一週間後、啓創学院との二回戦に臨んだ咲聖学園は、一回戦同様に優里が完璧な投球を披露し、六回を一安打無失点に抑えた。
打線も好調のクリーンナップを中心にヒットを重ね、終わってみれば7対1で快勝し、順当に三回戦に進出した。


「村上君、二回戦までは完璧な戦いぶりじゃないか。」

西岡理事長は学校に戻ってきた村上を激励した。


「理事長、ここまではこちらの想定通りです。

ですが、三回戦以降はそうはいきません。

順当にいけば、三回戦で泉西商、その後は榮進、興院、高島大附属の順に当たりそうですが、相手のレベルも当然上がっていきますし、これまでのような戦い方をするのはまず不可能でしょう。

それと、これからは日程も詰まってきます。

四日後の泉西商戦に勝てたとして、その次から決勝までの三試合は、すべて中一日で行われます。」


「水谷君のスタミナ問題か…」


「ええ。
彼女の今のスタミナでは、この日程で長いイニングを投げさせる事は出来ません。」

「そうか…

だが、こう言っちゃ悪いが、岸君で三回戦以降を抑えることなど不可能だろう?」

「ええ、まあ。
言い方は悪いですが、今日くらいの相手に失点してるようでは、この先は大事な場面では使えません。」

「だったら、水谷君には申し訳ないが、いけるところまで投げてもらうしかない。」


「理事長、水谷は手続き上の問題で仕方なく男子チームに所属しているだけで、本来なら女子の大会に出るべき人間です。

私は彼女を女子として扱ってますし、決して無理はさせません。

これだけマスコミにも取り上げられ、注目の的になっている選手なんです。

酷使なんてして何らかのアクシデントが起きてしまったら、それこそ大変なことになってしまいます。」


「まあ、そうだが…」


「しかし、理事長のお気持ちもよくわかっているつもりです。

今年がウチにとって一番のチャンスなのは間違いありません。

高校野球において、監督の采配など二の次だと思っていましたが、どうやら今年のウチの戦いでは、ベンチワークが勝敗を左右するでしょう。」


「そうだよ、村上君

頼んだよ」


「はい。

天才二人を擁する現チームで結果が残せなければ、未来永劫ウチは甲子園をどうのこうのと語る日は訪れないでしょう。

精一杯、やれるだけの事はやります。」

村上は一礼して理事長室を出ていった。




「村上君も辛辣な事を言う…」


西岡はフッと笑い、村上が出ていった後のドアを見つめた。
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