Two seam

フロイライン

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「ストライッ!」

優里の第一投は、ストレートが内角いっぱいに決まった。

浅丘の一番バッター加納大地は、フーッと深呼吸をしボックスを外したが、すぐに戻り、構え直した。


「速い

今津さん、今の球速かったですよね?」


「ええ。150は出てると思います。

それにキレもいい。
一年時のピッチングには及ばないが、かなり戻ってきてますよ。」


「期待できますね、これは」



今津や中里が感じたように、優里本人も自身の球がかなり走っているという実感があった。

大輔も同様で、いけるところまでストレートを続けようと決めた。


優里は二球目もストレートを投じ空振り、三球目もまたストレートを投げて空振りを取り、一番の加納をあっさりと退けた。

二番関根翔は加納への投球を見て、バットを短く持って右打席に入った。

大輔は構わず、ストレートのサインを出して、一球目を空振り
二球目は若干甘めに来たが、前に飛ばず擦ったようなファール
三球目は、まさか三球ともストレートが来るとは踏んでなかった関根の読みが大外れし、内角にズバッと決まって見逃しの三振となった。

三番バッターは右の大田真志

大輔は大田がもつ雰囲気を感じ取り、サインを変更。
カーブを要求した。

優里は頷き、全く同じフォームから投げ込んだ。
ストレートのタイミングで待っていた大田は、ピクリとも動けずに見逃してストライク。
二球目はストレートを強振したが空振り
三球目はフォークボールに対応出来ず、空振りの三振を喫した。


三者連続三振を取った優里の快投に超満員の観衆は大盛り上がりとなった。

勿論、咲聖のベンチも皆が雄叫びを上げて、優里を出迎えた。


「水谷、やっぱ、ストレートだけでいいわ」

大輔は浅丘打線の底がもう見えたのか、ベンチ奥で顔の汗を拭う優里にそう指示を出した。

「監督、いいっすか?」

一応村上にも許可を取り、二回以降は変化球を封印する事を話し合った。

「点差次第だが、水谷は五回まで。
六回から岸で行く。」

村上は部長の光岡にそう伝えたが

「ですが、水谷さんのピッチングが素晴らしいだけに、流れが変わってしまうとイヤですね。」

光岡はやや不安に思っているようだ。


「一応、水谷は外野を守らせて、いつでも再登板出来るようにはしておくつもりだが‥

勝ち進めば、全てがこういう戦い方の連続になる

岸に踏ん張ってもらわんとな。」


「そう願いたいものです。」


「まあ、今日の試合に限ればそこまで心配する必要はないかもな。」

一、二番の連続ヒットで、ノーアウト1.2塁のチャンスに打席に入る優里を見つめながら、村上は呟くように言った。
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