Two seam

展望

ノーシードの咲聖が甲子園に出場するには、全部で6試合こなさなければならない。

下馬評通りの高校が勝ち進むと想定すると、以下の通りの対戦相手になる。

一回戦　　浅丘
二回戦　　啓創学院
三回戦　　泉西商
準々決勝　榮進
準決勝　　興院
決勝　　　高島大附属

監督の村上は昨年まで考えを巡らせるのは、せいぜい三回戦までだった。
実際、その先まで考える必要がない事は結果が物語っている。

しかし、今年は超高校級と評判のスラッガー、富田大輔がいる

さらに、屈指の速球派投手の水谷優里も加わってくれた。

この二人にはやや劣るが、成長著しい主将の田宮大吾もクリーンナップの一角を担っている。

この三人が上手くハマれば、三回戦以降の展望も開けてくる。

しかし、水谷優里は性転換手術を経て女性の体になっており、そのスタミナに不安がある。

控え投手の岸を併用しながらでないと、優里の体力がもたないであろう。

つまり、自分の采配次第でどう転ぶか全くわからないのだ。

村上はかつてないほどの緊張感に包まれていた。

（それだけじゃない‥）

加えて理事長の西岡の過剰なまでの期待感が、村上の頭を悩ませた。

強豪校ではない咲聖で、富田と水谷をチームに入れたその手腕は見るべきものがあるが‥

（現場に介入しすぎなんだよ）

村上は自身に襲いかかるプレッシャーを怒りに変え、一回戦の浅丘戦に臨もうとしていた。