52 / 119
1回表
しおりを挟む
投球練習を終えた優里は、センター方向を向き、両手を上げ、大声で全員を鼓舞した。
その声はやはり甲高く女子そのものだったので、またしても神明ナインの顔に戸惑いの色が見えた。
神明の一番打者は俊足巧打が売りの澤村大輝
左バッターボックスに入り足下をならす。
キャッチャーの大輔は澤村を典型的な一番バッターだと判断し、セーフティーバントなどの奇襲を警戒した。
勿論優里も大輔もわかっており、初球はストレートを敢えて高めに外すという選択をした。
いつものようにセットポジションからゆったりとしたフォームで第一球を投げた。
サイン通り、ボールは澤村の胸の辺りを通過して大輔のミットに収まったが、ストライクとなった。
澤村が思わずバットを出してしまったからだ。
部長の光岡は
「あんなボール球に手を出すなんて、もう少しマシな相手を選べばよかったですかねえ」
と、不満を述べたが、村上の感想は違っていた。
「光岡さん、わかりませんか?
水谷の投げる球が手元で伸びたから振ってしまったんですよ。
初速と終速の差がないんですよ、水谷の球は。
さて、二球目をどうするか、富田は」
優里は二球目を投じた。
一球目に比べ、コースが甘いストレートを…
甘いというかど真ん中だった。
チャンスとばかりにコンパクトにスイングすると、金属音が響き渡った。
しかし、バットがボールの下に入り、ボールは大輔の頭上に。
大輔はマスクを外して追いかけようとするが、ボールはバックネットを越えていってしまった。
「ど真ん中の好球をドンピシャのタイミングで振ったのに前に飛ばず、ボールの下を叩いて真上に打ち上げた…
やはり球の走りが素晴らしい」
村上は光岡にわかりやすいように解説者ばりの説明をした。
優里は、三球目も一、二球目と全く同じフォームで投げ込むと、澤村はバットを出したが当たらず
空振りしてバランスを崩した。
見事な三球三振であった。
「ここでストライクゾーンから落ちていくフォークか
まあ、打てんな」
「ですね」
光岡もようやく優里の投球内容に理解が出来たようで、村上の解説に同調した。
その後、優里は二番、三番も落ち着いたピッチングで打ち取り、一回表を無得点で切り抜けた。
「ナイピッ!」
ベンチに帰ってきた優里を控え選手達が出迎え、大輔は優里と手と手でタッチし
「水谷、球走ってるわ
いけるとこまでこの組み立てで行こう」
と、言った。
その声はやはり甲高く女子そのものだったので、またしても神明ナインの顔に戸惑いの色が見えた。
神明の一番打者は俊足巧打が売りの澤村大輝
左バッターボックスに入り足下をならす。
キャッチャーの大輔は澤村を典型的な一番バッターだと判断し、セーフティーバントなどの奇襲を警戒した。
勿論優里も大輔もわかっており、初球はストレートを敢えて高めに外すという選択をした。
いつものようにセットポジションからゆったりとしたフォームで第一球を投げた。
サイン通り、ボールは澤村の胸の辺りを通過して大輔のミットに収まったが、ストライクとなった。
澤村が思わずバットを出してしまったからだ。
部長の光岡は
「あんなボール球に手を出すなんて、もう少しマシな相手を選べばよかったですかねえ」
と、不満を述べたが、村上の感想は違っていた。
「光岡さん、わかりませんか?
水谷の投げる球が手元で伸びたから振ってしまったんですよ。
初速と終速の差がないんですよ、水谷の球は。
さて、二球目をどうするか、富田は」
優里は二球目を投じた。
一球目に比べ、コースが甘いストレートを…
甘いというかど真ん中だった。
チャンスとばかりにコンパクトにスイングすると、金属音が響き渡った。
しかし、バットがボールの下に入り、ボールは大輔の頭上に。
大輔はマスクを外して追いかけようとするが、ボールはバックネットを越えていってしまった。
「ど真ん中の好球をドンピシャのタイミングで振ったのに前に飛ばず、ボールの下を叩いて真上に打ち上げた…
やはり球の走りが素晴らしい」
村上は光岡にわかりやすいように解説者ばりの説明をした。
優里は、三球目も一、二球目と全く同じフォームで投げ込むと、澤村はバットを出したが当たらず
空振りしてバランスを崩した。
見事な三球三振であった。
「ここでストライクゾーンから落ちていくフォークか
まあ、打てんな」
「ですね」
光岡もようやく優里の投球内容に理解が出来たようで、村上の解説に同調した。
その後、優里は二番、三番も落ち着いたピッチングで打ち取り、一回表を無得点で切り抜けた。
「ナイピッ!」
ベンチに帰ってきた優里を控え選手達が出迎え、大輔は優里と手と手でタッチし
「水谷、球走ってるわ
いけるとこまでこの組み立てで行こう」
と、言った。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説

W-score
フロイライン
恋愛
男に負けじと人生を仕事に捧げてきた山本 香菜子は、ゆとり世代の代表格のような新入社員である新開 優斗とペアを組まされる。
優斗のあまりのだらしなさと考えの甘さに、閉口する香菜子だったが…
NH大戦争
フロイライン
ファンタジー
呪詛を家業として代々暮らしてきた二階堂家。
その二十六代目にあたる高校二年生の零は、二階堂家始まって以来の落ちこぼれで、呪詛も出来なければ、代々身についているとされる霊能力すら皆無だった
そんな中、彼の周りで次々と事件が起きるのだが…

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる