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甲子園の夢が絶たれた事で、優里さんはある決断をします。

「女性への性転換手術です」

野球をしている間は多少気分がまぎれていた優里さんでしたが、この頃になると心と体のバランスが崩れ、生きる事に苦痛を感じるようになっていました。

この出場辞退は何かの啓示なのではないかと思い、優里さんは野球を辞める事を決め、あっさりと退部してしまいます。

そして、優里さんは翌年の3月に性適合手術を受け、女性になったのです。

大人でも辛くて泣き出してしまうという手術に耐え、優里さんは女性として生まれ変わりました。

術後のリハビリにも頑張った優里さんは体調が落ち着いてきたところで、学校に戻る事を決意しますが、所属していた野球部の監督の紹介で、咲聖学園に女子生徒として転入を果たします。

一度は野球を諦めた優里さんでしたが、丸和高校にはなかった女子野球部の存在を咲聖学園で知り、再び野球への関心が芽生え始めます。

そして、女子として入部し、木山すみれさん達と共に大会制覇を目指す事になります(女子の大会は参加校が少なく、地区予選というものがない)

しかし、運命は残酷で、再び悲劇が襲います。

性別変更をし女子として大会への参加を申請していた優里さんでしたが、法的に性別変更が可能となる満18歳に年齢が達しておらず、それを理由に連盟は優里さんの選手登録を却下したのです。

絶望の淵に立ち、今度こそ野球を辞める決意をした優里さんでしたが、現在、同じ高校に通う富田君等の強い勧めもあり、翻意し、三年生の夏を仲間達と戦い抜こうとしています。

野球部の村上監督はこう語ります。

「水谷はたしかに肉体的にハンデを背負っての活動になりますし、勿論女子として接しているわけですから、着替えやその他の事もしっかりケアしなければなりません。

ですが、それをも凌駕する実力が彼女にはあります。
本人が力を出し切れるよう、我々は精一杯フォローしていくだけです。」


女子としてはアドバンテージがあり、大会への参加に批判的な声もありましたが、男子としてはホルモンバランスの事もあり、大きなハンデを抱えながらのチャレンジとなっています。
それでも優里さんは前向きに捉えています。

「こうしてまた甲子園への挑戦が出来ることは、自分にとって、とてもラッキーなことだと思います。
悔いを残さないように精一杯頑張りたいと思います。」

優里さんの最後の夏が今、始まろうとしています。


~性同一性障害をのりこえて 或る少女の挑戦~

おわり


県予選一回戦を前にテレビで放送された優里のドキュメント番組は、優里の美貌も手伝って大反響を巻き起こし、
全国的な注目を集めるに至った。

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